シンデレラの娘たち

daisysacky

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第5章 すべては夢になりにけり

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「来たこと、あるの?」
 追いかけながら、柚に聞くと
「ううん、初めて!」
ニコニコしながら、柚は答える。
「えぇっ?」
それならなんで、道がわかるんだ?
下手すると、迷子になるぞ…と思うのに、手を引かれるまま、
歩いて行くうちに、周りの景色が変わってきていることに、
気が付いた。

「あれ?どうなっているんだ?」
 いつの間にか、森の奥に出ていて、目の前にのどかな田園風景が
広がっている。
「うわぁ~」
先ほどから柚の口は、開きっぱなしだ。
その姿に気が付くと、ジュンヤは思わず微笑む。
「ユウちゃんのおばあちゃんは、どこに住んでいるの?」
そう聞いてみる。
 すると柚はキョトンとして、
「おばあちゃん?」
不思議そうな顔をする。
ジュンヤはあれっと思い、
「お父さん、お母さんのおじいさん、おばあさんのことだよ」
そう言うと、柚は
「あぁ」とうなづく。
「パパのおばあちゃんは、だいぶ前に亡くなったんだって。
 だから、ユウは会ったことがないよ」
丸い目をして、そう言う。
「へぇ、そう?」
悪いことを、聞いちゃったなぁ~と思う。
「あっ、それじゃあ、ママのおばあちゃんは?」
あわててとりなすように、ジュンヤが聞く。
さらに柚は、えっという顔になり、
「ママはね、いないんだって。
 ママが子供の頃に、死んじゃったんだって!」
やはり真ん丸い目を大きく見開いて、柚はジュンヤを見あげた。

「え~っ、そうだったんだぁ」
 もしかしたら柚は…一度も、おばあちゃんの家に、行ったことが
ないのかもしれない。
そう思うとジュンヤは『自分たちと同じだ』と思う。
「だったら、田舎って、来たことがないの?」
もっとも柚が、どこに住んでいるのかは、知らないのだけれど…
「田舎?」
やはり柚には、わからないようだ。
「そうだなぁ」
どうやったら、わかってもらえるのだろう?
そう迷っていると…
田園風景の中に、ポツンと、まるで絵本の中から飛び出してきたような、
赤い屋根の煙突のついた家が、見えてきた。
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