29 / 140
第2章 あなたはだぁれ?
1
しおりを挟む
それは、初めてのことだった。
パパやママの制止を振り切って、気が付いたら、真っ暗な通りに
出ていた。
柚はハッとして、足を止めると、ここはどこだろう?と立ちすくむ。
足元には、ぶかぶかのパパのサンダルをつっかけている。
「なんで、パパの?」
どおりで、歩きにくかったわけだ。
すぐに脱ぎ捨てよう、と思ったけれど、そうするとはだしになる、
と気付いて、しかたなく思いとどまる。
「なんでママ…あんな顔をするのよ」
いつもは優しいママが、あんな風に柚を見るなんて!
自分を責めるような目で、柚を見ていたことに…
柚の幼い心は、傷ついていた。
「なんで、こんなの…」
いつの間にか、ガラスの靴ではなく、なぜかそのカケラを握り締めている
ことに気が付く。
それは、ガラスの靴のカカトの部分だ。
走っている最中に、壊れたのか?
捨てよう…と、道路に放り投げようとして、それがキラリと光を放つのを見て、
すぐに思いとどまる。
「ママ…泣いてた」
よっぽどママにとって、大切な物だったんだ。
(せめて、ボンドでくっつけてあげよう)
パパがよく、
「コイツはよく、くっつくんだ」
と自慢していた、アロンアルファを思い出して、そのかけらをポケットに
突っ込む。
もちろん端から、家出するつもりなどなかったので…
家に帰ろう、と柚は辺りを見まわす。
シンと静まり返った通りの側には、ボンヤリと自動販売機の灯りが、
まるで灯台のように、そこだけポッと照らしている。
「早く、おうちに帰らなくちゃ」
そう思って、光に吸い寄せられるように、その自動販売機に近づいた。
パパやママの制止を振り切って、気が付いたら、真っ暗な通りに
出ていた。
柚はハッとして、足を止めると、ここはどこだろう?と立ちすくむ。
足元には、ぶかぶかのパパのサンダルをつっかけている。
「なんで、パパの?」
どおりで、歩きにくかったわけだ。
すぐに脱ぎ捨てよう、と思ったけれど、そうするとはだしになる、
と気付いて、しかたなく思いとどまる。
「なんでママ…あんな顔をするのよ」
いつもは優しいママが、あんな風に柚を見るなんて!
自分を責めるような目で、柚を見ていたことに…
柚の幼い心は、傷ついていた。
「なんで、こんなの…」
いつの間にか、ガラスの靴ではなく、なぜかそのカケラを握り締めている
ことに気が付く。
それは、ガラスの靴のカカトの部分だ。
走っている最中に、壊れたのか?
捨てよう…と、道路に放り投げようとして、それがキラリと光を放つのを見て、
すぐに思いとどまる。
「ママ…泣いてた」
よっぽどママにとって、大切な物だったんだ。
(せめて、ボンドでくっつけてあげよう)
パパがよく、
「コイツはよく、くっつくんだ」
と自慢していた、アロンアルファを思い出して、そのかけらをポケットに
突っ込む。
もちろん端から、家出するつもりなどなかったので…
家に帰ろう、と柚は辺りを見まわす。
シンと静まり返った通りの側には、ボンヤリと自動販売機の灯りが、
まるで灯台のように、そこだけポッと照らしている。
「早く、おうちに帰らなくちゃ」
そう思って、光に吸い寄せられるように、その自動販売機に近づいた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる