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scene 9 もう1つののシンデレラ物語

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 それから少し真面目な顔をすると
「もしも、あなたが考えていることをするのなら…
 よーく考えなさいね。
 あなた…もうそれで、チャンスがなくなるわよ。
 後悔しないようにね」
大家さんがそう言うので、エラは静かにうなづきます。
戻って来た礼美は、何のことかわからずに、キョトンとして
2人を見つめました。

 それでもエラは…なんで何も言わないのに、わかるのだろう…と
訝し気に思っていると、
「そりゃあ、言わなくても、見ればわかるわよ~」
 大家さんは、意味ありげにニヤリ…と笑いました。
それからいつもの表情に戻ると、礼美の方を向いて、
「遠慮なく、連れて来てくれて、かまわないわよ!
 こっちは1人暮らしの老人だし…
 相手も、ここまでは追いかけて来ないと思うわよ」
真面目な顔をして言いました。
礼美は、ペコリと頭を下げると、元来た道を戻ります。
エラはというと、
「あなた…もう帰っていいわよ」と言う礼美の言葉に甘えて、
このままカスミの待つアパートへと、帰って行きました。

 少しいつもよりも遅れて帰りつくと…やはりカスミの方が
先に帰っていました。
「おかえりなさい」
台所で、珍しくエプロンをつけて、振り向きます。
すでに何やら、食べ物の匂いがするので、
「ごめんなさい!すぐに支度するわ」
エラはあわてて、カバンを置きに走ります。
「いいわよ、たまには私がやるわ。
 ゆっくりしてて、いいのよ」
にこやかにカスミが言います。
なぜだか機嫌のよさそうな声で、水道の蛇口をひねる音がします。
珍しく、カスミの鼻歌が聞こえてきました。
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