桜ハウスへいらっしゃい！

第18章 さようなら、桜ハウス

９

　　大家さんの息子は、誘ったけれども結局
「ボクがいたら、邪魔でしょう？」と言って、現れなかった。

　ガランとした大広間も、大きな座卓を３つ並べ、住人たちや、
占いのお客さん、その友達や、たまたま誘われてきた人たちで
ごった返し、台所でもすし詰め状態となる。
それでもタッパーや、ジプロックなどで差し入れした食物と
入れ替わり立ち代わり、食器や、コップや、温めたり
ガスレンジの前に立ったりした。
「こうして会うの…もう最後になるのかしら」
大家さんが寂しそうに言う。
「そんなこと、ないですよぉ。
　また、会いに来ますって！」
慰めるように、マイコが大きな声で言ったけれども。
それは本当になるかどうか、全く定かではないのだ。

　大家さん自慢のちらし寿司と、
　レイコさんの唐揚げ
　マイコのポテトサラダと、待子のおすまし…
全くのノープランだけれど、今は目の前のことに集中しよう、と
ズラリと様々な色や形、大きさまで全く違う大皿が、
座卓の中央に並ぶ…
サラさんはというと、お酒やジュースなどを差し入れして、
ひよりちゃん親子は、デザート担当で、示し合わせたわけではないけれど、
とてもにぎやかな食卓となった。

「ひよりちゃんは結局…そこの学校に変わるの？」
ニコニコしながら、サラさんが聞くと、ひよりちゃんはコクンと
うなづく。
「あそこなら…家にも近いし、いじめられることもないし」
やはりニコニコ笑顔で、彼女のお母さんが口を開く。
確か友達がいる、と言っていたけれど、
ひよりちゃんは前の学校で、色々とあったのかなぁと、
待子はボンヤリと考えていた。