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第18章 さようなら、桜ハウス
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この部屋は、バイト先にほど近い、駅から10分ほどの
築10年のアパートだ。
初めは引っ越しを反対していた待子の母親も、チラリと部屋を見るなり
「この部屋なら…越してくるのも、アリかもねぇ」
わずかに微笑むと、我が子を見つめる。
一方、あきらめきれないのが杏子の方で、
「せっかく一緒に、暮らせると思ったのにぃ!
なんかすごい、ガッカリ」と悲しそうな顔をした。
「ま、時々遊びに来ればいいじゃない」
待子が慰めるように言うと、「そうね」とうなづいた。
佐伯さんは、一昨日
待子は、今日
レイコさんとマイコが昨日…
それぞれ無事に、引っ越しを完了した。
その一方、あれほどみんなと一緒にいるのを、嫌がっていた中田さんは、
なんだかんだとまだ、新しい引っ越し先を見つけてはいない。
「あせらずに、のんびり探しても、大丈夫ですよ」
大家さんはおっとりと微笑む。
ひよりちゃん親子は、このまま引き続き、クマガイさんの家に
厄介になることになりそうだ。
「クマさんね、あぁ見えて、子供の世話が上手なんですよ」
久しぶりに見る、ひよりちゃんのお母さんは、なぜだかとても幸せそうだ。
「いっそのこと…クマガイさんと、結婚したら?」
からかうように、マイコが言うと
「うーん、それはどうかしらねぇ」
はぐらかすように言う彼女の顔が、ほんのりと紅に染まった。
「みんな、別々になるのねぇ」
しみじみとサラさんが、大広間の座卓に、取り皿を置く。
この日は、レイコさんが提案した、お別れ会だ。
今まで身を寄せ合っていた、この部屋の荷物がすっかりなくなると、
ガランとだだっ広い、ただの大きな部屋でしかなかった。
そこへ、サラさんや、杏子や杏子の彼氏まで手伝って、
(なぜだか彼氏までついてきた)
座卓を部屋のど真ん中に据える。
ガッシリとした木の机で、かなりずっしりと重い。
さすがに人手が多いとありがたい…と2人は大歓迎された。
築10年のアパートだ。
初めは引っ越しを反対していた待子の母親も、チラリと部屋を見るなり
「この部屋なら…越してくるのも、アリかもねぇ」
わずかに微笑むと、我が子を見つめる。
一方、あきらめきれないのが杏子の方で、
「せっかく一緒に、暮らせると思ったのにぃ!
なんかすごい、ガッカリ」と悲しそうな顔をした。
「ま、時々遊びに来ればいいじゃない」
待子が慰めるように言うと、「そうね」とうなづいた。
佐伯さんは、一昨日
待子は、今日
レイコさんとマイコが昨日…
それぞれ無事に、引っ越しを完了した。
その一方、あれほどみんなと一緒にいるのを、嫌がっていた中田さんは、
なんだかんだとまだ、新しい引っ越し先を見つけてはいない。
「あせらずに、のんびり探しても、大丈夫ですよ」
大家さんはおっとりと微笑む。
ひよりちゃん親子は、このまま引き続き、クマガイさんの家に
厄介になることになりそうだ。
「クマさんね、あぁ見えて、子供の世話が上手なんですよ」
久しぶりに見る、ひよりちゃんのお母さんは、なぜだかとても幸せそうだ。
「いっそのこと…クマガイさんと、結婚したら?」
からかうように、マイコが言うと
「うーん、それはどうかしらねぇ」
はぐらかすように言う彼女の顔が、ほんのりと紅に染まった。
「みんな、別々になるのねぇ」
しみじみとサラさんが、大広間の座卓に、取り皿を置く。
この日は、レイコさんが提案した、お別れ会だ。
今まで身を寄せ合っていた、この部屋の荷物がすっかりなくなると、
ガランとだだっ広い、ただの大きな部屋でしかなかった。
そこへ、サラさんや、杏子や杏子の彼氏まで手伝って、
(なぜだか彼氏までついてきた)
座卓を部屋のど真ん中に据える。
ガッシリとした木の机で、かなりずっしりと重い。
さすがに人手が多いとありがたい…と2人は大歓迎された。
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