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第18章  さようなら、桜ハウス

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  男性2人には目もくれず、母さんはわざとらしく杏子に近付くと、
「あら、まぁ。杏子ちゃんは、ずいぶん娘さんらしくなって!」
 手放しで、杏子のことを絶賛する。
「それに比べて」と我が娘をチラリと見ると
「うちの子は…バイトバイトで、まったくオシャレしようとか、
 その手のことには、興味がないのよねぇ」
嫌味のように、わざとらしくため息をつく。
「いいじゃないですか、オバサン!」
明るく杏子が言う。
「だって待子は、ワタシと違って、とっても真面目な、優等生なんですもん」
本音なのか、お世辞なのか…
おそらくヨイショなのだろうけれど、
幼なじみの杏子は、本能的に、母さんが喜ぶツボを心得ているのだ。
それが証拠に、みるみる母さんの顔色が明るくなり、
「あら、そう?成績は全然、よくないんだけどねぇ」
そうけなしながらも、明らかに嬉しそうだ。
それに気づいているのか、杏子は調子づいたように、
たたみかけるように言う。
「待子はね、とっても優しいし…
 けっこうみんなに、頼りにされているんですよ」

 さすがに歯が浮くようだ。
思わず待子は杏子をつっついて、この辺でやめてくれとそう思う。
まったくヨイショが過ぎるよ…
半ばかゆいと思うけれど、だけども杏子が自分のことを
こんな風に思っていてくれているのだ…
と思うと、思わず手を合わせたくなる。
杏子は自分と違って、こういう風に、気を遣うことのできる人なのだ…
と、あらためて親友のことを見直すのだ。

 杏子の彼氏を見るのは、実はこの時が初めてだったけれど、
とっても感じのいい人で…
(ハンサムではないけれど)とってもさわやかで優しい人だ、と思った。
こうして見ると、2人はお似合いだ…とあらためて思う。
彼女は、自分にないものを、一杯持っている…
あらためて思う待子なのだった。
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