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第15章 いのち短し 恋せよ乙女?
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「この人はねぇ、佐伯さん!今一緒の下宿に住んでいるの」
遠慮している佐伯さんの手をぐぃっと引っ張って、前に押し出すと、
待子は手短に、今日の出来事を説明した。
いきなりつけて来た、男のこと…
佐伯さんを逃がしたら、怒ってどこかに走り去ったこと…
するとクマガイさんの顔が、みるみる険しいものとなり、
「その人って、まだこの辺にいるの?」
気になるようで、声をひそめて聞いた。
「いや、いないと思うわよ」
待子があわてて口をはさむと、さらに「うーん」と彼は考え込む。
それから佐伯さんの方を向くと、
「ところで聞いてみるけど…
こんなことは、今回が初めてじゃないよね?
どのくらいの頻度であるの?」
考えこみながら聞くので、佐伯さんの顔色が一気にスッと血の気が
引いたように見えた。
時折後ろを振り返る仕草で、佐伯さんは口を閉ざすと…
困ったように頭を振り、
「何回か数えてはいないけど…けっこうひんぱんにあったかも」
言葉をにごすように言う。
待子は全く知らなかったので、息を飲み込んで佐伯さんの顔を
見つめる。
「毎日?」
「毎日だったり…2日に1度だったり…
色々です」
「同じ人?」
「はい」
「そうかぁ~」
またもクマガイさんは腕組みをして、考えこむ。
「何とかしてあげたいけど…毎日はちょっとねぇ」
さらに「うーん」と考え込む。
それからおもむろに顔を上げると
「とりあえず、1人にならないようにしよう!
うちに来る?」
突然キッパリとした口調で、クマガイさんは聞いた。
「えっ」
佐伯さんは一瞬、首をめぐらせて
「でもここって…」
戸惑いながら、待子を見つめる。
やはり いきなり面識のない人の家に来るのには、抵抗があるようだ。
「そりゃあ、そうよねぇ~
見ず知らずの男の人の家に、転がり込め、と言われてもねぇ」
待子は助け舟を出した。
遠慮している佐伯さんの手をぐぃっと引っ張って、前に押し出すと、
待子は手短に、今日の出来事を説明した。
いきなりつけて来た、男のこと…
佐伯さんを逃がしたら、怒ってどこかに走り去ったこと…
するとクマガイさんの顔が、みるみる険しいものとなり、
「その人って、まだこの辺にいるの?」
気になるようで、声をひそめて聞いた。
「いや、いないと思うわよ」
待子があわてて口をはさむと、さらに「うーん」と彼は考え込む。
それから佐伯さんの方を向くと、
「ところで聞いてみるけど…
こんなことは、今回が初めてじゃないよね?
どのくらいの頻度であるの?」
考えこみながら聞くので、佐伯さんの顔色が一気にスッと血の気が
引いたように見えた。
時折後ろを振り返る仕草で、佐伯さんは口を閉ざすと…
困ったように頭を振り、
「何回か数えてはいないけど…けっこうひんぱんにあったかも」
言葉をにごすように言う。
待子は全く知らなかったので、息を飲み込んで佐伯さんの顔を
見つめる。
「毎日?」
「毎日だったり…2日に1度だったり…
色々です」
「同じ人?」
「はい」
「そうかぁ~」
またもクマガイさんは腕組みをして、考えこむ。
「何とかしてあげたいけど…毎日はちょっとねぇ」
さらに「うーん」と考え込む。
それからおもむろに顔を上げると
「とりあえず、1人にならないようにしよう!
うちに来る?」
突然キッパリとした口調で、クマガイさんは聞いた。
「えっ」
佐伯さんは一瞬、首をめぐらせて
「でもここって…」
戸惑いながら、待子を見つめる。
やはり いきなり面識のない人の家に来るのには、抵抗があるようだ。
「そりゃあ、そうよねぇ~
見ず知らずの男の人の家に、転がり込め、と言われてもねぇ」
待子は助け舟を出した。
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