桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

文字の大きさ
上 下
361 / 428
第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

   28

しおりを挟む
「そうなんですかぁ~?
 商店街の向こうにある…豆腐屋さんのお隣の前田さんのお兄ちゃん
 じゃないんですかぁ?」
 ちょっと頭が弱い女の子のフリをして、なるべく無邪気に
間延びした口調で、さらにジロジロと男の顔を見る。
すると少しイラッとした表情を浮かべ、男は待子を押しのけようとあがくと、
「悪いけど…ボクはアンタのことは、知らないよ!
 急いでいるんだ、どけてくれ!」
立ちふさがる待子に向かって、語気を荒げて、彼女ににらみつける。
全身に怒りといらついた調子を向けられても…
待子はまったく頓着しない表情で、
「そうですかぁ~おかしいなぁ」
 しきりと頭をひねり、チラリとカーブミラーに目をやる。
そこにはスピードを上げて、自転車が遠ざかるのを、確かに確認した。

「あなた、ホントーに違うんですか?
 ホント他人とは思えないほど、うり2つなんだけどなぁ~」
わざとのんびりとした口調で言うと、待子はのろのろと…
体を横にずらした。
「とにかく他を当たってくれ!
 ホントにこういうの、困るんだよなぁ」
待子をにらみつけると、力任せに、彼女の肩を押した。
「ちょ、ちょっとぉ~!」
思わず待子が声をとがらせると、
「あんたのせいだ!あんたのせいでぇ~いなくなったんじゃあないかぁ~!」
(それって、佐伯さんのこと?)
そうどなると、男は舌打ちして、走り出した。

 見た感じは…20代後半~30代くらいだろうか。
サラリーマンというよりは、フリーターのように見えた。
少し陰のある顔の、ヒョロリとした体形の男だ…
ようやっとホッとため息をつく。
自転車の走り去った後を、必死で追いかけたけれども…
おそらくは、見つからないことだろう…
(佐伯さん、うまく逃げ切ったかなぁ)
そう密かに、心の中で願う待子だ…

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

モノクロの世界に君の声色をのせて

雫倉紗凡
ライト文芸
 しぶしぶ入った卓球部の練習をずる休み。  ぼーっと河川敷で絵を描いていた僕の前に現れたのは—— 「私ここで歌うから、聴いててね!」  図々しくて、自分勝手で、強引な君。  その歌声が、僕の世界を彩った。  隣の中学校同士の男の子と女の子が河川敷で出会い、交流する物語。  自分に自信の持てない少年少女の成長記録です。 ※この作品はフィクションです。作中の絵画・楽曲・地名などは実在しません。

【完結】推し活アラサー女子ゆっこのちょっと不思議な日常

日夏
ライト文芸
親友のなっちゃんこと結城那智(ゆうきなち)とその恋人麻生怜司(あそうれいじ)のふたりを一番近くで応援する、ゆっここと平木綿子(たいらゆうこ)のちょっと不思議な日常のお話です。 2024.6.18. 完結しました! ☆ご注意☆ ①この物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは 一切関係ありません。 ②タイトルに*がつくものは、年齢制限を含む文章表現がございます。 背景にご注意ください。

繰り返す、夏の黎明

ユウキ ヨルカ
ライト文芸
お互いの名前も顔も、話したことすらない五人の女子大生。 同じ大学の学生であること以外、これといった共通点も無いように思われた彼女たちは、ある夏の日、時を同じくして強烈な睡魔に襲われ意識を失う。 それからしばらくして、彼女たちは鳥も蝉も人間すらも存在しない、たった五人だけの静寂に満ちた夏の世界で目を覚ます。 なぜ、自分たち以外の人間が存在しないのか。 なぜ、自分たちだけがここで目を覚ましたのか。 ──そしてなぜ、同じ八月が永遠と繰り返され続けるのか。 一見、何の共通点も無いように思われた少女たち。 そんな彼女たちには、たった一つだけ、誰にも打ち明けることの出来ない共通点があった。 周囲の期待に背いた少女、唯一の友人を裏切った少女、夢を途中で投げ出した少女、一家惨殺事件生き残りの少女……。 彼女たちは、この繰り返される静寂と夏の世界から抜け出すため、決して忘れることのできないそれぞれの”後悔”と向き合っていく──。

はるか ワケあり転校生の7カ月 (まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 姉妹作)

武者走走九郎or大橋むつお
ライト文芸
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』の姉妹作! 大阪の人間は東京に行くと5分で順応する。近ごろは大阪弁が市民権を得て大阪弁というか吉本語でも普通に生きていける。 ところが東京の人間が大阪に来ると、その順応速度は絶望的に遅い。 東京人をジト目で見るほど大阪は偏狭ではないが、東京人が神経をすり減らすことなく生きていくには濃厚すぎる空気があるのだ。それは、あたかも天界の人間が俗な地上世界で生きることを余儀なくされることに等しい。 乃木坂学院高校二年の坂東はるかは、その大阪の見本のような府立真田山学院高校に転校する羽目になってしまった!

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

yolu
ライト文芸
café R のオーナー・莉子と、後輩の誘いから通い始めた盲目サラリーマン・連藤が、料理とワインで距離を縮めます。 連藤の同僚や後輩たちの恋愛模様を絡めながら、ふたりの恋愛はどう進むのか? ※小説家になろうでも連載をしている作品ですが、アルファポリスさんにて、書き直し投稿を行なっております。第1章の内容をより描写を濃く、エピソードを増やして、現在更新しております。

【完結】背中に羽をもつ少年が32歳のこじらせ女を救いに来てくれた話。【キスをもう一度だけ】

remo
ライト文芸
ーあの日のやり直しを、弟と入れ替わった元カレと。― トラウマ持ちの枯れ女・小牧ゆりの(32)      × 人気モデルの小悪魔男子・雨瀬季生(19)     ↓×↑ 忘れられない元カレ警察官・鷲宮佑京(32)    ――――――――― 官公庁で働く公務員の小牧ゆりの(32)は、男性が苦手。 ある日、かつて弟だった雨瀬季生(19)が家に押しかけてきた。奔放な季生に翻弄されるゆりのだが、季生ならゆりののコンプレックスを解消してくれるかも、と季生に男性克服のためのセラピーを依頼する。 季生の甘い手ほどきにドキドキが加速するゆりの。だが、ある日、空き巣に入られ、動揺している中、捜査警察官として来た元カレの鷲宮佑京(32)と再会する。 佑京こそがコンプレックスの元凶であり、最初で最後の忘れられない恋人。佑京が既婚だと知り落ち込むゆりのだが、再会の翌日、季生と佑京が事故に遭い、佑京は昏睡状態に。 目覚めた季生は、ゆりのに「俺は、鷲宮佑京だ」と告げて、…――― 天使は最後に世界一優しい嘘をついた。 「もう一度キスしたかった」あの日のやり直しを、弟と入れ替わった元カレと。 2021.12.10~

処理中です...