桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

文字の大きさ
上 下
357 / 428
第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

   24

しおりを挟む
「今日はずいぶん、ゆっくりねぇ」
 話をそらそうとして、佐伯さんが言うと、
「そうなの!今日は午前中、休講があって」と嬉しそうに言った。
 
 どちらからともなく、2人は肩を並べて玄関を出る。
数歩出たらすぐに、待子は足を止め、
「あっ、ワタシ、自転車なんだけど、佐伯さんは?」
思わず待子が言うと、
「あ、私も…」
これまた並んで、玄関脇をすり抜けて、自転車置き場へと向かう。
いつもはもっと、たわいもない話をするのだが…
この日はなぜか、佐伯さんの様子が落ち着きがない…
おや、どうしたのだろう…と初めて待子は気が付いた。
やたら周りを気にしていて、ずっとキョロキョロと、周りを警戒
しているのだ。
「ね、一体 どうしたの?」
不必要に、余計なことを詮索しない…と思ってはいたものの、
何となく放っておけない気がした。
「いや、別に…」
ちょこっと振り返ると、もう1度何かを探す顔つきでまたもキョロキョロするので、
さすがの待子も…どうも何かあるのか…と、さすがに気になるのだった。

 ほんの数歩行った所で、一瞬立ち止まり、固まったようになる佐伯さん。
待子は心配そうに、後ろを警戒する。
「大丈夫?」
すぐに寄り添って、かばうように傍らに立つ待子だ。
よく見ると…カタカタとかすかに隣で音がする。
何だろう…と見てみると、
ハンドルを持つ手が、ブルブルと震えているように見えた。
唇を真一文字にして、キュッと下唇をかむような仕草…
佐伯さんの顔色は、血の気が引いて、真っ青だ。
カタカタと、ハンドルを持つ手が小刻みに震えて…
これは尋常ではないな、何かがおかしい…というのが、
待子にも伝わってきた…


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

繰り返す、夏の黎明

ユウキ ヨルカ
ライト文芸
お互いの名前も顔も、話したことすらない五人の女子大生。 同じ大学の学生であること以外、これといった共通点も無いように思われた彼女たちは、ある夏の日、時を同じくして強烈な睡魔に襲われ意識を失う。 それからしばらくして、彼女たちは鳥も蝉も人間すらも存在しない、たった五人だけの静寂に満ちた夏の世界で目を覚ます。 なぜ、自分たち以外の人間が存在しないのか。 なぜ、自分たちだけがここで目を覚ましたのか。 ──そしてなぜ、同じ八月が永遠と繰り返され続けるのか。 一見、何の共通点も無いように思われた少女たち。 そんな彼女たちには、たった一つだけ、誰にも打ち明けることの出来ない共通点があった。 周囲の期待に背いた少女、唯一の友人を裏切った少女、夢を途中で投げ出した少女、一家惨殺事件生き残りの少女……。 彼女たちは、この繰り返される静寂と夏の世界から抜け出すため、決して忘れることのできないそれぞれの”後悔”と向き合っていく──。

はるか ワケあり転校生の7カ月 (まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 姉妹作)

武者走走九郎or大橋むつお
ライト文芸
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』の姉妹作! 大阪の人間は東京に行くと5分で順応する。近ごろは大阪弁が市民権を得て大阪弁というか吉本語でも普通に生きていける。 ところが東京の人間が大阪に来ると、その順応速度は絶望的に遅い。 東京人をジト目で見るほど大阪は偏狭ではないが、東京人が神経をすり減らすことなく生きていくには濃厚すぎる空気があるのだ。それは、あたかも天界の人間が俗な地上世界で生きることを余儀なくされることに等しい。 乃木坂学院高校二年の坂東はるかは、その大阪の見本のような府立真田山学院高校に転校する羽目になってしまった!

café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

yolu
ライト文芸
café R のオーナー・莉子と、後輩の誘いから通い始めた盲目サラリーマン・連藤が、料理とワインで距離を縮めます。 連藤の同僚や後輩たちの恋愛模様を絡めながら、ふたりの恋愛はどう進むのか? ※小説家になろうでも連載をしている作品ですが、アルファポリスさんにて、書き直し投稿を行なっております。第1章の内容をより描写を濃く、エピソードを増やして、現在更新しております。

【完結】背中に羽をもつ少年が32歳のこじらせ女を救いに来てくれた話。【キスをもう一度だけ】

remo
ライト文芸
ーあの日のやり直しを、弟と入れ替わった元カレと。― トラウマ持ちの枯れ女・小牧ゆりの(32)      × 人気モデルの小悪魔男子・雨瀬季生(19)     ↓×↑ 忘れられない元カレ警察官・鷲宮佑京(32)    ――――――――― 官公庁で働く公務員の小牧ゆりの(32)は、男性が苦手。 ある日、かつて弟だった雨瀬季生(19)が家に押しかけてきた。奔放な季生に翻弄されるゆりのだが、季生ならゆりののコンプレックスを解消してくれるかも、と季生に男性克服のためのセラピーを依頼する。 季生の甘い手ほどきにドキドキが加速するゆりの。だが、ある日、空き巣に入られ、動揺している中、捜査警察官として来た元カレの鷲宮佑京(32)と再会する。 佑京こそがコンプレックスの元凶であり、最初で最後の忘れられない恋人。佑京が既婚だと知り落ち込むゆりのだが、再会の翌日、季生と佑京が事故に遭い、佑京は昏睡状態に。 目覚めた季生は、ゆりのに「俺は、鷲宮佑京だ」と告げて、…――― 天使は最後に世界一優しい嘘をついた。 「もう一度キスしたかった」あの日のやり直しを、弟と入れ替わった元カレと。 2021.12.10~

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

なばり屋怪奇譚

柴野日向
ライト文芸
死神にモクリコクリ、すねこすりに骸骨駅長。 東雲彰と柊晴斗は、そんな人ではない者たちが訪れる店、なばり屋を営んでいる。 時には人からの相談事を受け付けながら、彼らは少し変わった日常を過ごしていた。 そんななばり屋に、ある日一人の男が客としてやって来る。 彼は田舎の家に潜む怪奇現象に悩まされ、その原因を祓ってほしいというのだが――。 少し悲しくどこか愉快な、あやかし達との日常物語。

処理中です...