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第15章 いのち短し 恋せよ乙女?
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乙女のように恥じらうレイコさんを見て、待子はニコニコしながら、
「いいえ、そんなぁ~
いつもキレイだなぁ、と思って」
そう言うと、洗濯物を1枚ずつ、洗濯機に放り込む。
「あら、お世辞なんて、いらないわよぉ」
華やかな声で笑いながら、待子の側に、レイコさんも並ぶ。
同じように大きなレジ袋に、タオルやらシャツなどが、チラリと
透けて見えた。
(水商売の人って…下着まで、クリーニングに出すと思ってたのになぁ)
案外庶民的なのね、と変なところで感心する。
もっとも…レイコさんは理由があって、節約しているようなのだが…
こういうところは、普通の主婦と、なんら変わりがないなぁと、
待子はひそかに思う。
「あのぉ、レイコさんって…どうしてここに住んでいるのですか?」
なるべくさり気ない調子で聞くと…
丁寧にブラウスをたたんで、ピンク色のネットに入れて、無言で
1つずつ洗濯機に入れる作業を続けている。
よく見ると…節くれだった指先は、赤くささくれも出来ていて、
はがれかけたマニキュアが、華やかな夜の世界で働く女性とは、
およそかけ離れた、ただの疲れた中年の女性を思わせた。
はげかけた爪の色が鮮やかなオレンジ色で、それだけを見ると、
普通の主婦とは違う、と一目で感じる。
「どうしてって…だって前にも言ってたでしょ?
少しでもお金を貯めて、自分の店を持つのが夢だって」
「でも…何もこんなトコに住まなくても…
普通のアパートでもいいのでは?」
この桜ハウスはどちらかというと…借金をかかえていたり、
ストーカーから身を隠すためだったり、
仕送りの少ない苦学生が、住むような古びた、昭和の遺物のような
下宿屋だ。
(たまにこういう建物好きな外国人が来たりするが)
するとレイコさんは、チラリと顔を上げると、ニッコリと微笑んだ。
「いいえ、そんなぁ~
いつもキレイだなぁ、と思って」
そう言うと、洗濯物を1枚ずつ、洗濯機に放り込む。
「あら、お世辞なんて、いらないわよぉ」
華やかな声で笑いながら、待子の側に、レイコさんも並ぶ。
同じように大きなレジ袋に、タオルやらシャツなどが、チラリと
透けて見えた。
(水商売の人って…下着まで、クリーニングに出すと思ってたのになぁ)
案外庶民的なのね、と変なところで感心する。
もっとも…レイコさんは理由があって、節約しているようなのだが…
こういうところは、普通の主婦と、なんら変わりがないなぁと、
待子はひそかに思う。
「あのぉ、レイコさんって…どうしてここに住んでいるのですか?」
なるべくさり気ない調子で聞くと…
丁寧にブラウスをたたんで、ピンク色のネットに入れて、無言で
1つずつ洗濯機に入れる作業を続けている。
よく見ると…節くれだった指先は、赤くささくれも出来ていて、
はがれかけたマニキュアが、華やかな夜の世界で働く女性とは、
およそかけ離れた、ただの疲れた中年の女性を思わせた。
はげかけた爪の色が鮮やかなオレンジ色で、それだけを見ると、
普通の主婦とは違う、と一目で感じる。
「どうしてって…だって前にも言ってたでしょ?
少しでもお金を貯めて、自分の店を持つのが夢だって」
「でも…何もこんなトコに住まなくても…
普通のアパートでもいいのでは?」
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ストーカーから身を隠すためだったり、
仕送りの少ない苦学生が、住むような古びた、昭和の遺物のような
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するとレイコさんは、チラリと顔を上げると、ニッコリと微笑んだ。
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