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第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

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「そんなこと…ないよ!」
 即座に杏子は否定する。
「だって…通学路の、ハンカチの君とか!」
「あっ、よく覚えているねぇ」
あきれたように、杏子は言う。
本人はもうすでに、忘れかけていたようだ。
「校門で待ち伏せしていた、謎のお兄さんとか?」
「あぁ~それはちょっと、怖かったかもぉ」
 待子と杏子は顔を見合わせると、クスッと笑う。
物心つく前から…2人は一緒にいるので、杏子のことは、
他の誰よりも(本人よりも)よく知っている待子だ。

「そうそう!後をつけられたことも、あったよねぇ」
「あ、夏休み!」
「バイトの後!」
 高校生の時…(学校に内緒で)2人で喫茶店で、バイトしたことがあった。
そこで、時々コーヒー1杯で、何時間もねばるお客さんがいて…
「確か、その人!杏子のシフトが終わるのを、待ち伏せしてたんだよね?」
ズバリと待子は言う。
「そうそう!あれは、怖かったんだよねぇ」
顔を見合わせる。
店長に交渉して、たいてい2人が一緒に働けるように、組んでもらって
いたのだが…
たまたま1人、バイトが休んで、自動的に、杏子が入る時間を
ずらされたのだ。
「心配でね、仕事終わりに、あわてて店に行ったら」
「捕まってたのよねぇ」
杏子も思い出して、遠い目をする。
「確かしつこく連絡先を聞かれて…
「困ってた時に、待子が来てくれたんだよね」
「あの時は、ヤバかったよね?」
2人は顔を見合わせた。
「ね、知ってる?店長も実は、杏子のこと…好きだったんだよ!」
「えっ、うそ!」
楽しそうな声が反響して、思いのほか大きな声になる。
「だっていつも…杏子のこと、相変わらずひいきしてたし、かばってたでしょ?」
「そうかなぁ」
「そうそう!みんなでアイツ、絶対杏子のこと、狙ってたんだって、噂してたんだよ?」
「知らなかったぁ~」

 せっかく新しい彼氏のことを聞こう…と思っていたのに…
何だか段々、話が脱線してくるようだ。
「ね、待子!今度みんなで…合コンしよっ」
うなづきつつ、杏子がそう言った。
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