上 下
345 / 428
第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

   12

しおりを挟む
「あるよぉ、あるけど、自炊もしなくちゃ!」
 待子はマスターの顔を、ボンヤリと思い出す。
きっと交渉すれば、少しは時間を増やしてくれるはず。
「お父さんに、お小遣いとか、もらえないの?」
のんびりとした口調で、杏子は言う。
「うーん、母さんに見つかると…かえって大変だなぁ」
「そっかぁ~」
 杏子は母 淑子のことを、知っているのだ。
もしもばれたら…と思うと、家族全員に火種が降りかかるのが、明らかなので…
これは 全くの問題外だ。

 すっかり散財してしまったので、結局はこの後 服を見る、というのは
今日のところはなしにして、ブラブラとウィンドーショッピングだ。
ショーウィンドーの中は、もう華やかな色彩が踊っている。
「あれ、いいねぇ」
「待子、似合うんじゃない?」
 女友達はこんなことだけでも、十分盛り上がるのだ。
「ソフトもある」
「お腹すいた?」
「あ、じゃあ、たこ焼きでも食べる?
 私がおごるよ」
 チラリと待子の顔をのぞき込んで、杏子が聞くと、
「あ、それ、いいねぇ~」
今度は嬉しそうに、待子ははしゃいだ声をあげた。


「でさぁ~そのオバサンって、どうなったの?」
 先ほどの続き…とばかりに、杏子は聞く。
「オバサン?」
いきなり話を振られたので、ぼぅっとする待子だ。
タコヤキを1つ、ブツッと串にさすと、それをくわえたまま、ボンヤリとする。
「ほら!大家さんのトコに来た、女の人!」
じれったそうに、杏子は串を振り回す。
あぶないなぁ~と横目で見つつ、
「あぁ~あの人ね」とようやく思い出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

阿漕の浦奇談

多谷昇太
ライト文芸
 平安時代後期の宮中でめったに起きないことが出来しました。北面の武士佐藤義清と、彼とは身分違いにあたる、さる上臈の女房との間に立った噂話です。上臈の女房が誰であったかは史書に記されていませんが、一説ではそれが中宮璋子であったことが根強く論じられています。もし事実であったならまさにそれはあり得べからざる事態となるわけで、それを称して阿漕の浦の事態という代名詞までもが付けられているようです。本来阿漕の浦とは伊勢の国の漁師で阿漕という名の男が、御所ご用達の漁場で禁漁を犯したことを云うのです。空前絶後とも云うべきそれは大それた事、罪でしたので、以後めったに起きないことの例えとして阿漕の浦が使われるようになりました。さてでは話を戻して冒頭の、こちらの阿漕の浦の方ですが仮にこれが事実であったとしたら、そこから推考し論ずべき点が多々あるようにも私の目には写りました。もの書き、小説家としての目からということですが、ではそれはなぜかと云うに、中宮璋子の置かれた数奇な運命と方やの佐藤義清、のちの西行法師の生き様からして、単に御法度の恋と云うだけでは済まされない、万人にとって大事で普遍的な課題があると、そう着目したからです。さらにはこの身分違いの恋を神仏と人間との間のそれにさえ類推してみました。ですから、もちろんこの物語は史実ではなく想像の、架空のものであることを始めに言明しておかねばなりません。具体的な展開、あらすじについてはどうぞ本編へとそのままお入りください。筋を云うにはあまりにも推論的な要素が多いからですが、その正誤についてはどうぞ各々でなさってみてください。ただ異世界における、あたかも歌舞伎の舞台に見るような大仕掛けがあることは申し添えておきます。

鬼教師後藤のメガトンパンチ

GMJ
ライト文芸
教室の扉を開けたら飛んでくるのは鉄拳制裁。 小学六年生という、大人になりそうでなれない年頃の僕と 鉄拳制裁をモットーとする後藤先生のハートフルボッコストーリー。 ※この小説はエブリスタからの転載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界の東の端っこのフットボール・チルドレン

遊佐東吾
ライト文芸
鬼島中学サッカー部に所属する榛名暁平は、中学レベルをはるかに超えた天賦の才能を持つセンターバックだ。 家族を交通事故で失った彼と、鉄の結束を誇る仲間たちはただひたすら勝利を求める。たとえ相手がサッカーエリートの集まるクラブユースであろうとも。 サッカーを通してつながっている小さなコミュニティを守るため、センチメンタルでタフな少年少女たちはそれぞれのやり方で必死に戦っていく。

【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド

まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。 事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。 一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。 その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。 そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。 ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。 そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。 第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。 表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

処理中です...