桜ハウスへいらっしゃい！

第１５章 いのち短し 恋せよ乙女？

５

　　なんでそんなにこだわるの？
何度も何度も、待子は杏子の誘いを断ったけれども
「いいよ、行こうよ！大丈夫だからさぁ」
　結局は、杏子に押し切られる形で、うなづいてしまった。

「待子はね、接客業のバイトをしてるんでしょ？
　だったらさぁ、きれいにしておいた方がいいよ」
　でも実際のところは、マスターは何も言わないし、お客さんも、
「女子大生かぁ～若くていいね！」と言われることが多いから、
そんな風に思ったことがないなぁと、待子は思う。
「それにね！」
杏子はいたずらっぽく、目をクルンと回すと、
「もしかしたら、そういうとこで、出会いがあるかもしれないわよ！」
そう言われると…そうかなぁと思い、折れるしかないのだ。

　それに新学期が始まってから、丁度落ち着いてきたところだったので、
たまには買い物もいいかぁ～と。
待子も女の子！
やはり買い物をするのは、楽しいし、好きなのは…否めないのだ。
（でもその分…緊急財政で、食費を節約せねば…だけどね）
心に誓うのだ。
そんな待子の逡巡を見て取ると、
「それなら　オジサンに、お金をもらえばいいのに」
いともたやすく、杏子は言うけれど…
杏子のような恵まれたお嬢さん育ちではないので、
それは違う、と思うのだ。

「大丈夫！母さんとも約束しているし」
「待子って、バカがつくくらい、生真面目なんだからぁ」
苦笑する杏子。
だけども、やっぱりアンタにはムリだったのか…と言われるのが
悔しいので、何が何でも、やってやるぞ！と強く思うのだ。
（ま、もっとも…化粧品の買い出しで、そこまで力こぶを作る人が
いるか、という話だけどね！）
　すると杏子はさらに、ニッコリと微笑むと
「大丈夫！ブランド物とかじゃないから」
そう言いながら、ぐいぐいと待子を引きずるようにして、
お店の中へ突入した。