桜ハウスへいらっしゃい！

第14章 一時休戦

６

「最近、どうしたの？なんだか気持ち悪いわ」
　いつものように大家さんが、玄関を掃いていると
「あっ、それ、私がやります！」
早速待子が、大家さんの手から、ホウキを奪い取った。
まるでひったくるようにすると…
それでもまだ、疑っているのか、
「ねぇ、みんな、何か企んでいるの？」
気持ち悪そうに、、大家さんは家を見上げる。
「そんなこと、ないですよぉ」
そう言いつつも、内心はヒヤヒヤだ。
　もしかしたら、わざとらしいのでは？とか、
もう少し、さり気なくできないのかなぁとか。
普段やりなれていないだけに、かなり難しさにじぃっと
していたが…

だがそんなことも、すべて大家さんには気付いているようで
「この前も、お風呂の最後の人が、後片付けします、と言っていたわ」
クスクスと笑う。
（だれだ？）
もうちょっと上手にやれないかなぁと、内心思うけれど、
これではまるで、罰ゲームのようだわ、と思う。
大家さんは、ニコニコすると、
「もうねぇ～みんな、そんなに気を使わなくても、いいのよぉ」
わかっているわ、という顔をして、大家さんはにこやかに言った。
「もうね、余計な気遣いしなくていいからね。
　そんなこと、しなくても…十分だから。
　いつも通りにしてくれて、いいのよ」
そう言うけれども…少しでも、大家さんの負担を減らしてあげたい、
という思いは変わらないのだ。
おそらく他の住人も同じだろう…と思う。

「いいって、いいって！
　好きで働いているのだから」
みんなに聞こえるようにと、若干声を張って、大家さんは言った。