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第14章 一時休戦
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「どんなことだよ?」
聞いてないぞ、とばかりに、男は大家さんに詰め寄る。
「それはまだ…誰にも言えないわ」
さわやかな顔をして、そう言うけれども…案外ガンとして、口を
割ろうとはしない。
男はフンと横を向くと、
「まぁ、好きにすればいいさ!」
気を悪くしたように、ソッポを向いて言う。
「でも…サラには引き続き、ここにいてもらうつもりだからな」
てっきりサラさんの意志で、ここにいるのかと思いきや…
どうやらキッカケはそうではないようだ。
だけども当の本人は
「あら、そう?」
嬉しそうに言った。
「よかったじゃない」
ようやく解放されて、少し背中を丸めて、すごすごと帰る男を見て…
ホッとしたように、大家さんは待子たちに言う。
「ん、まぁ、そうなんだけど…」
だけどまだ、なんだか釈然としないものを感じて、待子は浮かない
顔をする。
「だけど…そう簡単には、引き下がらないような気がする…」
確かに今は、退散してくれたけれど。
待子の隣で、佐伯さんがつぶやいた。
「そうよね、そう」
すぐにレイコさんもうなづいた。
くせ者ぞろいの桜ハウスだ。
油断は禁物というところは、相変わらず変わりがない。
「サラさんには悪いけど…
あの人、何かまだ…信用出来ない気がするなぁ」
なんだかしっくりこないものを感じて、待子もそう言う。
「わかる!あの手のタイプは…一旦引き下がっても、
また来るタイプ!」
「あー、それ、わかる!
なんだったんだ、ってヤツよね」
マイコも思い当たるようで、中田さんと大きくうなづく。
「やっぱり、そうよねぇ~わかる気がする」
大家さんも、サラさんも、思い当たる節があるようで、苦笑いを
しながらうなづく。
お互いに「やっぱりそうよね」とうなづきあい、
ここだけは、みんなの意見が、ピタリと一致した。
「とにかく油断しないで…何かあったら、お互いに情報を
共有しましょ?」
もっともらしく、中田さんが言う。
やはり年長者としては、若者たちを1歩リードしてでも、
守りたいようだ…
それはまたそれで、ありがたい…そう思う待子だ。
聞いてないぞ、とばかりに、男は大家さんに詰め寄る。
「それはまだ…誰にも言えないわ」
さわやかな顔をして、そう言うけれども…案外ガンとして、口を
割ろうとはしない。
男はフンと横を向くと、
「まぁ、好きにすればいいさ!」
気を悪くしたように、ソッポを向いて言う。
「でも…サラには引き続き、ここにいてもらうつもりだからな」
てっきりサラさんの意志で、ここにいるのかと思いきや…
どうやらキッカケはそうではないようだ。
だけども当の本人は
「あら、そう?」
嬉しそうに言った。
「よかったじゃない」
ようやく解放されて、少し背中を丸めて、すごすごと帰る男を見て…
ホッとしたように、大家さんは待子たちに言う。
「ん、まぁ、そうなんだけど…」
だけどまだ、なんだか釈然としないものを感じて、待子は浮かない
顔をする。
「だけど…そう簡単には、引き下がらないような気がする…」
確かに今は、退散してくれたけれど。
待子の隣で、佐伯さんがつぶやいた。
「そうよね、そう」
すぐにレイコさんもうなづいた。
くせ者ぞろいの桜ハウスだ。
油断は禁物というところは、相変わらず変わりがない。
「サラさんには悪いけど…
あの人、何かまだ…信用出来ない気がするなぁ」
なんだかしっくりこないものを感じて、待子もそう言う。
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また来るタイプ!」
「あー、それ、わかる!
なんだったんだ、ってヤツよね」
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「やっぱり、そうよねぇ~わかる気がする」
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しながらうなづく。
お互いに「やっぱりそうよね」とうなづきあい、
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「とにかく油断しないで…何かあったら、お互いに情報を
共有しましょ?」
もっともらしく、中田さんが言う。
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守りたいようだ…
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