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第12章  桜ハウスへようこそ

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  待子の弁当を覗き込むと、佐伯さんはほんのりと微笑む。
そうしておもむろに、サンドイッチに手を伸ばした。
そのしぐさを見ていると、自分ももうすでに弁当箱代わりの
タッパーを開いているので、今さらしまうわけにもいかず、
開き直って箸を伸ばす。

「私ね、早速不動産屋さんに電話をしたの」
 さり気ない様子で、佐伯さんが言うので、
(えっ、あれって本気だったの?もう?)
その行動力に驚く待子だ。
「善は急げっていうしね。
 大家さんに占ってもらったんだけど、
 いいんじゃない?っていうことで、早速連絡先を教えてもらったの」
 ニコニコしながら言うので、まさかそのために、大家さんに
会いたかったの?と思うのだった。
(ま、もっとも…それだけではないだろうけど…)

「もしかして、あの不動産屋さん?」
待子はすぐさま、あのヒョウ柄のオバサンを思い出す。
そういえば、久しく見かけていないなぁ~と。
「そうそう、ヒョウ柄の!」
「クセの強い?」
 お互いに確認するように、目を見合わせると
「フジヨシさん!」
声を合わせて言った。
「やっぱり!」
「そうだった!」
2人は声をそろえて、ケラケラと笑う。
もっとも、そのアクの強さでいえば、待子の母淑子も負けては
いない。
「やっぱり、あのオバサンかぁ~」
待子が言うと、思わずクスクスと笑ってしまう。
さらに懐かしさに、なんだかホッと安心するのだ。
「いいオバサン、なんだけどね」
「なんかどうも…うさんくさいんだよね」
なんでだろう、と思うけれども。

 今まであまり話したことがない2人だが…ここにきて
初めて、意見がピッタリと一致する。
ある意味それも、スゴイことだなぁと、感心していると、
「条件付きでね、借りることになったの」
澄ました顔で、佐伯さんは言った。
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