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第12章  桜ハウスへようこそ

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「なんでそんなに…そこに執着するんだろうね?」
 受話器の向こうで、慰めるように杏子の声が、待子にも聞こえる。
「うーん、それはねぇ~大家さんのせいじゃないかなぁ」
心当たりは、1つしかない。
「きっと…大家さんに、見てもらいたいんだよ」
力強く言い切ると、
何をそんなに…こだわっているのだろう?
待子はひどく気になっている。
「何をそんなに…占って欲しいんだろうな」不思議そうに聞く杏子に、
「さぁ~」ととぼけてみせる。
「でも…」
「ここに来れば…会えるのにね」と頭をひねっている。
「それだけじゃ、足りないんじゃないの?」
杏子が静かにそう言った。
そうは言っても…ここにいるからと言って、別段占ってくれる
わけもないのだけども。
「わかんないけど、大家さんのことに、興味があるんだろうねぇ」
「まぁ確かに!
 ただで占ってもらえるのなら、私だって、占って欲しいくらいだけどねぇ」
 昨日の佐伯さんの様子を思い出して、待子は言う。

 両親を説得して、明日にでも出直す、と佐伯さんは息巻いていたけれども…
「まぁね、単に一人暮らしがしたいだけなんじゃないの?」
そろそろこの話題に飽きたのか、アクビをかみ殺した声で、
杏子は言った。
「まさか…待子に興味がある、とかじゃないよね?」
面白そうに杏子が言うと、
「それはないでしょ!」
即座にピシャリと否定した。

 待子よりも、すっかりここの住人たちと、佐伯さんは意気投合
してしまい…いつの間にか越してくる…という風に、
話がまとまっていた。
「まさか、その話…なくなったわけじゃないよね?」
疑うように、待子はつぶやいた。
 

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