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第12章 桜ハウスへようこそ
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「私の部屋は、洗濯場の奥の方の部屋よ」
待子はそう言うと、指で刺し示す。
例によって佐伯さんは「あら」と言うと、
「それじゃあ、洗濯する時に、とても便利よね!」
ニコニコしながら言う。
それにも慣れて来て、待子は平然と「そうね」とだけ言った。
歓迎会は、18時過ぎからだから、まだみんな帰って来ていない
状況だ。
(もっとも夜から仕事のレイコさんと、1階の外国人は
まだ部屋にいるような気もするのだが…)
「始まるまで、まだ時間があるみたい!
どうする?」
それでも一旦、自室に通すと…いちいち細かいことまで、
感激したように、楽しそうにする佐伯さんが、落ち着くまで
とりあえず待とうと思う。
その間も…
「あら、可愛いお部屋!」
「あら、可愛いカーテン!」
「炊飯ジャーも可愛い!」
「掃除機も小さいのねぇ」
「あっ、ガスコンロも、小さいのねぇ」
小さな流し台にも、冷蔵庫にも、食器棚代わりの整理ダンスにも…
あらゆるものに、目を留め、感激し…
(疲れないのだろうか…)
待子が心配するほどだった。
キョロキョロ落ち着きなく、部屋の中を見ている佐伯さんを横目にして、
お茶をわかしていた待子は、小さな水切りから、マグカップを取り出し
お湯を注ぐ…
ティーバッグを入れたまま、小さなコタツ机に2つ並べる。
すると早速、予想はしていたのだが、
「あら、可愛いカップ!」と騒いだ後…佐伯さんは顔を上げ、
「私ね…行ってみたいトコがあるのよ」
ようやくまともな言葉を口にした。
待子はそう言うと、指で刺し示す。
例によって佐伯さんは「あら」と言うと、
「それじゃあ、洗濯する時に、とても便利よね!」
ニコニコしながら言う。
それにも慣れて来て、待子は平然と「そうね」とだけ言った。
歓迎会は、18時過ぎからだから、まだみんな帰って来ていない
状況だ。
(もっとも夜から仕事のレイコさんと、1階の外国人は
まだ部屋にいるような気もするのだが…)
「始まるまで、まだ時間があるみたい!
どうする?」
それでも一旦、自室に通すと…いちいち細かいことまで、
感激したように、楽しそうにする佐伯さんが、落ち着くまで
とりあえず待とうと思う。
その間も…
「あら、可愛いお部屋!」
「あら、可愛いカーテン!」
「炊飯ジャーも可愛い!」
「掃除機も小さいのねぇ」
「あっ、ガスコンロも、小さいのねぇ」
小さな流し台にも、冷蔵庫にも、食器棚代わりの整理ダンスにも…
あらゆるものに、目を留め、感激し…
(疲れないのだろうか…)
待子が心配するほどだった。
キョロキョロ落ち着きなく、部屋の中を見ている佐伯さんを横目にして、
お茶をわかしていた待子は、小さな水切りから、マグカップを取り出し
お湯を注ぐ…
ティーバッグを入れたまま、小さなコタツ机に2つ並べる。
すると早速、予想はしていたのだが、
「あら、可愛いカップ!」と騒いだ後…佐伯さんは顔を上げ、
「私ね…行ってみたいトコがあるのよ」
ようやくまともな言葉を口にした。
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