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第12章  桜ハウスへようこそ

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  ギシギシと音をたてて、玄関の引き戸を開けて入る時にも、佐伯さんは
イヤな顔1つせずに、興味津々で待子の後に続く。
「すごい!かなりの年季が入っているよねぇ」
やや興奮気味に、前のめりになってのぞき込む。
(この人の思考回路って…どうなっているのかしら?)
 普通ならば「えぇ~っ」とか「きゃ~」とか言いそうなものなのに、
むしろ楽しそうでさえある。
自分が初めてこの物件を見た時の反応とのギャップに、待子はあらためて
違和感を覚える。
それはまるで…評判のお化け屋敷か、心霊スポットに潜入するような雰囲気で…
(佐伯さんって、こんな人だったんだぁ)
驚きと共に意外に思えたのだ。

 当の本人は、待子がそんなことを考えているとは、露知らず…
まったく平然としている。
「風野さんのお部屋って…やっぱり2階?」
これまたかなり年代物の、急な階段を見上げて、佐伯さんはニコニコと
している。
「なんだか、あれね!おばあちゃんの家に来たみたい」
はしゃぐように、そう言うから
「おばあちゃんって、一緒に住んでいないの?」
頭をかしげて聞くと、佐伯さんは大きくうなづいて
「山の方に住んでるの~
 ど田舎だから、いまだにポットン便所なのよ!
 しかもまきでお風呂もたいてるし!」
そう言いながらも、とても楽しそうだ。
何だか子供のように、興奮気味にそう言うと
「まさかここも…ポットン便所?」
笑いながらそう言う。
「五右衛門風呂だったりして」と笑うので
「いいえ!一応水洗便所よ。
 共同だけどね」
佐伯さんがガッカリするのではないか…と、待子は顔色をうかがいつつ、
そう言った。
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