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第11章 新しい仲間たち
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待子の質問に、ニヤニヤしながら、こちらを見ている杏子は、
「私…楽器が吹いてみたいんだよねぇ」
楽しそうに言う。
「ダメよ、それ!
お金がかかるし、一からやるのは、結構キツイよ」
すぐさま待子は激しく頭を振った。
「もっと気楽に出来るもの…お金がかからないのがいいんだ」
妙に冷めた目で、待子が言うと、
「なによ、それ?」
笑いながら、杏子が言う。
「そんなの、あるの?」
マスターは、向こうの席の接客をしていたのに、さっきまで話を
していたみたいに、うんうんと大きくうなづいている。
「たまには何か…楽しくて、ワクワクすることをしてみれば?」
妙に軽い調子で、まるで八百屋で、大根を物色しているよう。
「おっ、マスターも、そう思うよね?」
いつの間に、杏子とマスターは意見があったようで、楽しそうに
うなづき合っている。
「2対1で、キミの負けだ」
わけのわからないことまで、マスターは言い出した。
「でもマスター!
私、ホントーに、そんな余裕、ないんですけど」
それでも抵抗しようと、待子は言うけれど…
マスターも杏子も聞かないフリをする。
何しろ仕送りだけでは、生活するのも、かなりきつい。
「奨学金は?」
今度は心配そうに、声をひそめて聞くと、杏子の顔をじぃっと
見つめ
「もらってるけど…それだけだと、生活がカツカツで、
遊ぶ余裕なんて、ないわよ」
なんだか申し訳なさそうに、待子は頭を振った。
別に母親が、イジワルをしているわけではないと思う。
ただ少ない家計で、学費と下宿代をねん出しているため、苦しい
財政事情なのは知っているつもりだ。
私立大学、というのもあるし、下には弟も控えている。
それよりもなによりも…
一人暮らしがしたいのならば、自分でどうにかしろ、というのを
暗に示していると、待子は感じていたのだ。
「私…楽器が吹いてみたいんだよねぇ」
楽しそうに言う。
「ダメよ、それ!
お金がかかるし、一からやるのは、結構キツイよ」
すぐさま待子は激しく頭を振った。
「もっと気楽に出来るもの…お金がかからないのがいいんだ」
妙に冷めた目で、待子が言うと、
「なによ、それ?」
笑いながら、杏子が言う。
「そんなの、あるの?」
マスターは、向こうの席の接客をしていたのに、さっきまで話を
していたみたいに、うんうんと大きくうなづいている。
「たまには何か…楽しくて、ワクワクすることをしてみれば?」
妙に軽い調子で、まるで八百屋で、大根を物色しているよう。
「おっ、マスターも、そう思うよね?」
いつの間に、杏子とマスターは意見があったようで、楽しそうに
うなづき合っている。
「2対1で、キミの負けだ」
わけのわからないことまで、マスターは言い出した。
「でもマスター!
私、ホントーに、そんな余裕、ないんですけど」
それでも抵抗しようと、待子は言うけれど…
マスターも杏子も聞かないフリをする。
何しろ仕送りだけでは、生活するのも、かなりきつい。
「奨学金は?」
今度は心配そうに、声をひそめて聞くと、杏子の顔をじぃっと
見つめ
「もらってるけど…それだけだと、生活がカツカツで、
遊ぶ余裕なんて、ないわよ」
なんだか申し訳なさそうに、待子は頭を振った。
別に母親が、イジワルをしているわけではないと思う。
ただ少ない家計で、学費と下宿代をねん出しているため、苦しい
財政事情なのは知っているつもりだ。
私立大学、というのもあるし、下には弟も控えている。
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