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第10章   思いがけない味方登場

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  すると急にその女性は立ち止まると、待子の方を振り向いて、
「あなたね、洗濯機を使うのはいいけど…気を付けなさいね!」
さっきとはまるで違う口調で言う。
「えっ」
なんのことだかわからず、ぼうっとする待子。
「放ったらかしにしてたら、勝手に持って行く連中がいるからね!」
と言い捨てると、ズカズカと引き戸の方へと向かう。
何を言ってるんだ、とそちらの方を見ると、またも戸が半開きに
なっていて、そのすき間から、驚いた顔の1階の住人がこちらを見ていた。
パッと待子と目が合う…
なぜここに?と思うけれど、おそらく興奮して話していたから、
下の階にまで、声が聞こえていたのだろうか。
待子と目が合うと、ヘラッと悪びれもしない顔で
こちらを見た…

「何言ってるよぉ。
 そんなこと、しないよぉ。
 余っているもの、借りるだけだよ。
 助け合いの精神ね」
言い訳にもならないような、わけのわからないことを、口走っている。
外国人の片割れの…確か中国人だったか…その人が平然として、
堂々とした態度でそう言う。
待子は、今まで知らなかったので、ひどく戸惑って、混乱しているようだ。
「えっ?濡れたままの服を?」
目を大きく見開いて、その2人組を見ると、
外国人の2人組は、大きくうなづくと、
「そんなの乾かせば、何にも問題ないもんねぇ」と言うので…
待子は思わず頭を抱え込みたくなる。
まさかそこまでするとは、知らなかったので…
(たまに、使っていた洗濯機から、放り出されて、手近のカゴに置いてある
こともあったけれど…)
今度から洗濯物は…物干し場ではなくて、すぐに自分の部屋の
窓の外に干そう…と、密かにそう思うのだった。
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