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第8章 援軍来たる…
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ほんの数分前の出来事だったけれど…待子にとっては
思いがけないことだった。
その後すぐに、サラさんが他の席の人に、声をかけられて
そちらに行ってしまった後も、待子はまだボーッとしていた。
「カッコいいよね!」
「なんか、大人の女って感じ」
もちろん初対面なので、まだサラさんという人が、何者かは
わからないけれど…
とてもいい人だ、と2人は直感でそう感じていた。
なんとなく、去りがたい…
サラさんの姿は、どこかに隠れてしまったけれども。
それでも、なんとなく腰が落ち着いてしまい
「ママが待ってるから、帰らなくちゃ」
携帯をのぞき込んだ杏子が、ようやく声に出した。
そんな杏子を無視するわけにもいかず…重い腰をむりやり
イスからはがすようにして、
「また、一緒に会おう」
「lineするね」
お互いに惜しむようにして、ようやく待子は杏子を、駅まで見送った。
去り際に…
「待子の言う、その『魔女の館』私も見てみたいな!」
ちょっぴりいたずらっぽい目をする杏子は、相変わらずだった。
「また今度ね」
駅の改札の辺りで別れると、
「さぁて、私も帰りますか」
わざと声に出して言うと、待子は自転車置き場の方へ、とって返した。
「そうだ…買い出しもしないと」
急に思いつく。
明日の朝、たちまち食べるものがない。
明日の朝食べるパン。
コーヒーも欲しい。
ヨーグルトも欲しい。
欲しいものは、まだまだたくさんあるけれど…
(節約しなくちゃね!)
ここにきて、急に自分のサイフの中身が気になりだした。
父さんが帰る前に、軍資金を多少はくれたけれども。
「これからは、自分でやりくりしなくちゃ」
ようやく一人暮らしを始めた、という実感が湧いて来た。
ここ数日のサイフの減り方には、少し後悔する待子だった…
思いがけないことだった。
その後すぐに、サラさんが他の席の人に、声をかけられて
そちらに行ってしまった後も、待子はまだボーッとしていた。
「カッコいいよね!」
「なんか、大人の女って感じ」
もちろん初対面なので、まだサラさんという人が、何者かは
わからないけれど…
とてもいい人だ、と2人は直感でそう感じていた。
なんとなく、去りがたい…
サラさんの姿は、どこかに隠れてしまったけれども。
それでも、なんとなく腰が落ち着いてしまい
「ママが待ってるから、帰らなくちゃ」
携帯をのぞき込んだ杏子が、ようやく声に出した。
そんな杏子を無視するわけにもいかず…重い腰をむりやり
イスからはがすようにして、
「また、一緒に会おう」
「lineするね」
お互いに惜しむようにして、ようやく待子は杏子を、駅まで見送った。
去り際に…
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