桜ハウスへいらっしゃい！

第８章 援軍来たる…

１５

「かわいい！」
　女の人は、フワッと笑う。
「そっかぁ～大学生なんだぁ」
なんだかとても、嬉しそうだ。
「ここの街はね、ちょっと田舎だけど、とっても落ち着いてて、
　とってもいい街よ！好きになって、欲しいなぁ～」
昔っから、ゴリ押しには、めっぽうやたらと、弱いのだ・・・

「そっかぁ～大学生なんだぁ」
待子を見ると、にぃっと笑い、とても楽しそうだ。
正確に言うと、入学式はまだだけど…
もうすでに、この街を好きになってきている待子は、大きくうなづいている。
「ここのマスターの作るごはんも、サイコーだから、
　またここに来てね！」
スルリとイスから、腰を上げるので、待子はあわてて
「あの、またここで、演奏されるんですか？」
思わずそう言ったのは、また会いたい…そう思ったからだ。
「演奏？あっ、ピアノのこと？」
女の人は、キョトンとした顔をすると…
「別に、この日とこの日、と決まっているわけじゃないし、
　演奏というほど、大した演奏をするわけじゃないし」
　なんだかひどく謙遜しているように、聞こえる。
「それにね、ピアノを預かってもらってるから…
　弾きたくなると、ここへ寄るだけなの」
そう言われると…なんだか少しガッカリとする待子だ。
「でも…たまにこうして来るから、運が良ければ、また
　会えるわよ」
そう言うと、ニッコリとこちらを見て、笑う。

「はじめまして！私はサラ。よろしくね」
サラさんは、スッとさり気なく、待子に手を差し出す。
目が合うと、ピカピカに光る瞳を向けて、待子に向かって微笑んだ。