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第8章  援軍来たる…

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  杏子もボーっとした顔で、食い入るように、その人のことを
見つめている。
「すごい…カッコよすぎ!
 あの人~なにもの?」
そう聞くけれど、誰も気にしていない、様子。
待子だって、初めて見るのだ。

 たまたま隣のテーブルにいた男性が、2人の様子に気付いたのか
「すごいだろ?あの人…こうやって、時々弾きに来るんだ」
 さり気ない調子で、話しかけている。
「ここの店員ですか?」
「いや、違うと思うよ」
 どうやらこのお客さんは、常連客なのか?
その人は、慣れた調子で、にこやかに話しかけてくれる。
「なんでも、噂によると…マスターの知り合いで、家が手狭になったから…
 自分のピアノを、ここに預かってもらって、こうして時々、
 弾きにきている…と聞いたよ」
 やけに情報通のようだ。
「えっ、じゃあ…ここで雇われている、というわけではないんですね?」
驚いた顔で、待子は言う…
「そう、そのはずだ」
男の人は、面倒くさそうにせず、自分からペラペラと話してくれる。
さらに「失礼」と言うと、おもむろにタバコを取り出す。

「でも…ピアノを弾く代わりに、ここでの食事代はタダにしてもらってる、
 ともっぱらの噂だ」
そう言うと…
「あくまでも、人から聞いた話なんだけどね」
「ホントなのかなぁ」
ポツリと話を聞いていると、あの女の人が、来た時と同じくらい、
とても自然な仕草で、スラリと立ち上がると、ピアノの蓋を
閉めて、また元来た席へ、戻ろうとしていた。

 






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