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第8章  援軍来たる…

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  この店は、照明がまぶしいくらい、明るいわけではなく、
間接照明が、ほんのりとオレンジ色の陰を落とす…
そんな穴倉のような、ボンヤリとした空間だ。
カウンター席の側には、年代物の大きな柱時計と、
正面には、単なるインテリアで飾っているのか…
大きなピアノが置いてある。
「ここって、演奏できるのかなぁ」
ふと待子がつぶやくと、
「出来ますよ」
通りすがりの女性が、クルリと待子の方に顔を向けて言った。
(だれ、あの人?知ってる人?)
杏子が小声でささやく。
(知らないよ!初めて会った)
マネをして、待子も小声でささやくと…
その人は、スタスタと、カウンターの方まで進んで行く。

 これから、何が始まるのだろう…
期待のこもった目で、その人を追いかけている。
化粧気のほとんどない、黒くて長い髪を、無造作に束ねただけの、
その女性…
この店の常連さんなのだろうか?
ショートブーツに、ブラックジーンズを合わせ、上は
白いTシャツ姿のその人は…
とりたてて高価な服を着ているわけでもないのに、
なぜだかとても、カッコよく見えた。
寸分のすきもなく、オシャレをしているわけでもないのに…
ただ唯一のアクセサリーは、耳に大きなワッカのピアスを
しているだけで…
それでもそれが、なぜだか大人な雰囲気をかもしだしている。
「ね、あの人なんだか、カッコイイ」
チラリと見ると、杏子は待子に向かってささやいた。

 それは今までに、見たことのないタイプの人で…
お母さんとも、学校の先生とも、全く違う。
しいていうなら、1流のモデルさんのような、洗練された雰囲気の人で…
そこにいるだけで、まとう空気感が全然違って、なぜだか
目を引き付けられる…
妙に目立っている、存在だった。
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