上 下
125 / 428
第6章  魔女の館へようこそ!

   36

しおりを挟む
「すごいねぇ」
思わず言うと、
「すごいでしょ」とひよりちゃんが言う。
思わず頭が下がる思いだ。
まさか小学生の女の子の方が、シッカリしてるとは、と思っていると…
「うちのママって、すごいんだ」と言うから、アレ?と思った。
「ひよりちゃんも!ホント、えらいよ」
それでも重ねて言うと、照れたように頭をかきむしると
「ぜんぜん!そんなこと、ないよぉ」
ヒマワリのような、だけど少しはにかんだ笑顔を見せる。
「もう」と、ボンと背中をたたくと、待子はよろけそうになる。
「大したこと、ないよ!
 当たり前のことだもん。
 それよりも…お姉さんの方が、大変だよ」
と、目をグルリと回して見せる。
「何にもないのに、1人で暮らすんだもん」
「そう…何にも、ないんだよねぇ」
思い出すと、力が抜けるけれど…
目の前のひよりちゃんの笑顔を見ると、何だか元気になるような
気がする。

「よし、行こうか」
 玄関を出ると…ひよりちゃんは自転車を押して、待子は
その傍らを歩き始めた。
「まずは、自転車が欲しいなぁ」
ハンドルを持つひよりちゃんの後ろで、自転車を押しながら言うと
「よろず屋さんにはあるわよ」
ハンドルを握ったまま、いともあっさりと、ひよりちゃんは言う。
「あそこなら、中古できれいなのが、たくさんあるわよ」
言葉だけ聞くと、生活力のある、主婦のようだ。
「大丈夫かしら、すぐにパンクしない?」
心配そうに聞くと
「新品だと、すぐに盗まれるから、慣れるまでは、中古で十分!
 だって、この自転車も、よろず屋さんで買ったんだもん!」
妙に説得力のある言葉で、待子も「うん」とうなづいてしまう。
「見えないでしょ?」
そう言うと…自慢そうにチラリと、待子を振り返った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聡明な彼女と透明なボクの交換日記

志波 連
ライト文芸
 「出会い」というのは偶然なのか、必然なのか。  そんな哲学的なことはどうでもよくて、でも、「出会い」こそ地球上の人類が繁栄し続けるための唯一のキーワードであることは疑う余地がありません。  薄曇りの不安定な空模様のある日、何かに引かれるように二人の男女が出会います。 恥ずかしそうに語り掛ける女性。戸惑いながら答える男性。日常のそこかしこで見かける他愛もない光景。ほほえましいひと時です。   どこにでもあるそんな出来事ですが、たった一つだけ違うところが有りました。  そう、男性は「透明人間」だったのです。  透明人間の「ディアファン」と小学校教師の「はるか」はひょんなことから今時古風な交換日記を始めることになりました。普通の人間と透明人間が交際し始めるのに、何が適切か彼らなりに考えた方法だったのでしょう。  舞台は現在。透明人間という存在が公になってから約1年。もともと噂程度に「透明人間がいるらしい」という話は昔からありました。そんな半信半疑な中、とある事件がきっかけになって透明人間が明るみにでてしまい、出演したテレビでもトリックでないことが証明されました。  当時、最低支持率を更新し続けていた首相の人気取り政策で「透明人間保護法」というよくわからない法律が制定され、透明人間に基本的な人権と選挙権が与えられました。  当の透明人間たちは考え方もばらばらで、この機会にと「マイナンバーカード」を作る者もいれば、今まで通り密かに暮らし続ける者もいて、結局、数十人の登録者が「日本人」と認められました。  そんな世界の片隅で出会った二人でしたが、はたしてうまくいくのでしょうか。  まだ今は交際が始まったばかり。今後のことなんて二人は全然考えてなんかいません。  そんな二人の行く末を、我々は日記を盗み見しながら見守ろうではありませんか。  他サイトでも掲載しています。  表紙は写真ACより使用しました。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指すい桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

鬼と柊

はるた
ライト文芸
逢魔が時に人間と鬼の世界が繋がることがあるらしい。

夏草の露

だんぞう
ライト文芸
地図に載らない伝説の遊園地廃墟。そこへ集ったのは望んだ者たちと望まなかった者たち。古くからの因縁と疑心暗鬼が交差する中で見つかる真実は、果たして何をもたらすだろうか。

お盆に台風 in北三陸2024

ようさん
ライト文芸
 2024年、8月。  お盆の帰省シーズン序盤、台風5号が北東北を直撃する予報が出る中、北三陸出身の不良中年(?)昌弘は、ひと回り年下の不思議ちゃん系青年(?)圭人と一緒に東北新幹線に乗っていた。  いつまでも元気で口やかましいと思っていた実家の両親は、例の感染症騒動以来何かと衰えが目立つ。  緊急安全確保の警報が出る実家へ向かう新幹線の車中、地元に暮らす幼馴染の咲恵から町直通のバスが停まってしまったという連絡が入る。  昌弘の実家は無事なのか?そして、無事に実家でのお盆休暇を過ごすことができるのか!? ※公開中のサブタイトルを一部変更しました。内容にほぼ変更はありません(9.18) ※先に執筆した「ばあちゃんの豆しとぎ」のシリーズ作品です。前作の主人公、静子の祖母の葬儀から約20年経った現代が舞台。  前作を読んでなくても楽しめます。  やや残念気味の中年に成長したはとこの(元)イケメン好青年・昌弘が台風の近づく北三陸で、鉄オタの迷相棒・圭人と頑張るお話(予定)   ※体験談をヒントにしたフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。 ※題材に対してネタっぽい作風で大変申し訳ありません。戦乱や気象変動による災害の犠牲が世界から無くなることを祈りつつ真剣に書いております。ご不快に思われたらスルーでお願いします。  

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

処理中です...