桜ハウスへいらっしゃい！

第６章 魔女の館へようこそ！

６

　　またもガタガタと、窓が揺さぶられる音がする。
これは、風ではない。
明らかに、何者かの仕業だ…と確信し、あわてながらも、目の前に置いてある、
懐中電灯に手を伸ばした。
そうしてギュッと握りしめると、まるでバットのように、振りかぶる…
携帯は…何かあったら通報しよう…と、こちらは反対側の手に、
握りしめている。
緊張しながらも、カーテンの向こうを凝視していると…
ついに、ガタン！と大きな音をたてて、窓が大きく押し広げられた。

「だれ？」
悲鳴のような声を上げると、待子は左手にはスマホ、
右手には懐中電灯を、相変わらずギュッと握りしめている。
ソロリソロリと近付いて行く…
（ホウキがあればいいのに！それとも物干しざおか？）
残念に思いながらも、勇気を振り起こして、カーテンの向こうを
凝視していると…
ユラユラと揺れていたカーテンが、シャッと開かれると、
いきなり黒い固まりが、飛び込んできた…
「ギャアアアアア…！」
突然の侵入者に、待子は腰を抜かして、悲鳴を上げた。
まさか２階の、しかも窓から…人が入って来るなどと、
待子は思い付きもしなかった。
しかも、電気のついた部屋に…
まさかそうなるとは、想像もしていなかったので、
夢中で、めっぽうやたらと、懐中電灯を振り回し、
「誰かぁ～
　誰か来てぇ～！」
腰が抜けたまま、叫び続けた。
黒い固まりは、窓からゴトンと転げ落ちるようにすると、
「なに？だれ？」
こちらもまた、驚いた声を出している。
するとさらに、「キャア～～！」
パニック状態になった待子が、ひたすら叫び続け、
「えっ？えっ？えっ？」
その人物も、叫ぶ待子に、驚いている。
「なんで、人が？
　ここ、誰もいないんじゃないの？」
２人のすさまじい声に、ようやく引き戸をガタガタと揺らす
音が聞こえた。