桜ハウスへいらっしゃい！

第６章 魔女の館へようこそ！

３

　　ドアにカギをかけると、入ってすぐのところで靴を脱ぎ、
開いていた小窓をしめて、風呂場のガラス戸を開くと…
昔ながらのタイル貼りの体洗い場がある。
小さな浴槽が、それだけ異様な存在感を放っていた。
自宅のお風呂とはまた別のまったく雰囲気が、待子を待ちかねていた。

「ぬるかったら、温めてね」
部屋の外から、声がする‥
こういうのも、いいなぁ～とあらためて、頭を下げた。
もっとも…他人の家のお風呂まで借りたのは、
気持ち悪いといえば、そうなのだが…
こうして自分の家ではなくて、自分の小さなお城に寝るのが初めてなので…
寝る前に、もう少し片付けようと思い立ち、ゴソゴソしていた。
　ゆっくりとお風呂に入った後、寝る前に、もうひと仕事しようと、
お約束のコーヒー牛乳を口に含むと…
ガランとした誰もいない部屋に、あらためて…
この部屋は、こんなに広かったけぇ～としみじみと思うのだった。
布団は、大家さんのあまったフトン。
「こんなこともあろうかと…
　干しておいて、よかったわぁ」
嬉々として、大家さんは言う。
そんな姿を見ると…本当に、いい人なのだなぁ～と感じていた。
それにしても、これがもっと小ぎれいなアパートだったら…
こうはいくまい、と待子は思うのだ。
（たまには母さんの言うことも、一理あるかもね）
などと…珍しく、しおらしいことを思う。

　カーテンを少し開けて、窓の外を見ると、家とは全く違う風景に、
ますます知らないトコに来たのだなぁ～と感じていた。
うれしいような、寂しいような。
そんな複雑な想いに、浸っていた。