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第5章  いざ!出陣!

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  すると待子はためらうように、部屋と淑子を振り返る。
引っ越ししたとはいえ、まだろくに生活必需品のない、この小さな城…
布団もない、台所用品もそろっていない、家電もろくにない…
これでは、屋根のあるキャンプのようなものだ。
(やっぱり、母さんが止めても、引っ越し前に用意しておけばよかった)
後悔したけれども…
「帰るなら、早く用意しなさい。渋滞に巻き込まれてしまうわ」
一日バタバタしたせいか、すっかり不機嫌な淑子を見ると…
中々うん、とはいえない。
本来なら、これで「お疲れ様」だの「ありがとう」だの言って、
玄関先まで見送るのだが…
ここで完全に、予定が狂ってしまった。

どうしよう…
帰ろうか、それともこのまま、1晩、サバイバル気分を味わうか…
と思っていると、あいた引き戸のすき間から
「あ、まだいらしたのね?」
大家さんの顏が、ちょこんとのぞいていた。
「今日はどうも、ありがとうございました」
 すっかり気を許したのか、丁寧に頭を下げる貴文に、
「やはりまだ、お布団がないのね?
 よろしければ、今日は母屋に泊まりませんか?」
人の好い優しい笑顔で、待子に向かって話しかけた。
「えっ?」
直前まで、帰ろうか…と心が傾いていたので、思ってもいない、
申し出だった。
突然のことに、驚いて顏を上げる待子に、ふわ~と包み込むような
笑みを浮かべて、
「大したことはできないけど…晩御飯もあるし、お風呂もあるし、
 お布団ももちろん、お貸ししますよ」
願ってもない、ありがたい申し出に…すっかり心が折れそうになっていた、
待子は、思わずコクリとうなづいた。
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