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第4章  引っ越し前奏曲

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「大体1人なのに…引っ越しトラックなんて、もったいない」と淑子は
言う…
衣類や、お気に入りの本や、フトンやパソコンなど…まとめて送るつもりだった
待子は、淑子の言い分には納得がいかない。
「じゃあ、どうするの?」
半ば膨れたように、口をとがらせて聞くと、
「電気製品は、向こうで買えばいい。
 布団は直接、引っ越し先に運んでもらえばいい。
 あと、細々としたものは、100均とかで買えばいいし…
 そんなに荷物は、ないでしょ?」
キッパリと淑子は言い切った。
そう言われれば、そうだ…と思うけれども。
「あと、必要最低限のものだけは、宅配便で取りに来てもらうから」
さっさと淑子は、引っ越しにまつわるあれこれを、1人で決めてしまう。
もちろんダンボールも、スーパーでもらってきたものを差し出して…
「あんまり余計なものは、持って行かないのよ」
釘を刺すのを忘れなかった…


「オバサンらしいね!」
待子の嘆きの告白を聞くと、杏子はクスクス笑う。
「うちはその逆!
 ママが、お皿から、鍋から、フライパンから…なんでも持たせようと
 張り切るから…とんでもない荷物になりそうで、
 結局引っ越しトラック、頼んだのよ」
母親の文句を言う…というよりは、杏子は何だかとても楽しそうだ。
それを聞くにつれ、待子は羨ましくて仕方ない…
「いいなぁ~杏子のママは、優しくて!」
はぁ~と待子はため息をもらす。
「私も、そんなママならよかったのになぁ」
羨ましそうに言う待子とはうらはらに、
「そうでもないよ!
 うちのママは頼りないから…何にも決められないし…
 オバサンみたいにシッカリしている方が、たのもしいから羨ましいよ」
 慰めるように、杏子は言うけれど、それでもきっと…
自分の母親の方が、いいと思っているにちがいない…
そう思う待子なのだ。


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