59 / 428
第4章 引っ越し前奏曲
3
しおりを挟む
「大体1人なのに…引っ越しトラックなんて、もったいない」と淑子は
言う…
衣類や、お気に入りの本や、フトンやパソコンなど…まとめて送るつもりだった
待子は、淑子の言い分には納得がいかない。
「じゃあ、どうするの?」
半ば膨れたように、口をとがらせて聞くと、
「電気製品は、向こうで買えばいい。
布団は直接、引っ越し先に運んでもらえばいい。
あと、細々としたものは、100均とかで買えばいいし…
そんなに荷物は、ないでしょ?」
キッパリと淑子は言い切った。
そう言われれば、そうだ…と思うけれども。
「あと、必要最低限のものだけは、宅配便で取りに来てもらうから」
さっさと淑子は、引っ越しにまつわるあれこれを、1人で決めてしまう。
もちろんダンボールも、スーパーでもらってきたものを差し出して…
「あんまり余計なものは、持って行かないのよ」
釘を刺すのを忘れなかった…
「オバサンらしいね!」
待子の嘆きの告白を聞くと、杏子はクスクス笑う。
「うちはその逆!
ママが、お皿から、鍋から、フライパンから…なんでも持たせようと
張り切るから…とんでもない荷物になりそうで、
結局引っ越しトラック、頼んだのよ」
母親の文句を言う…というよりは、杏子は何だかとても楽しそうだ。
それを聞くにつれ、待子は羨ましくて仕方ない…
「いいなぁ~杏子のママは、優しくて!」
はぁ~と待子はため息をもらす。
「私も、そんなママならよかったのになぁ」
羨ましそうに言う待子とはうらはらに、
「そうでもないよ!
うちのママは頼りないから…何にも決められないし…
オバサンみたいにシッカリしている方が、たのもしいから羨ましいよ」
慰めるように、杏子は言うけれど、それでもきっと…
自分の母親の方が、いいと思っているにちがいない…
そう思う待子なのだ。
言う…
衣類や、お気に入りの本や、フトンやパソコンなど…まとめて送るつもりだった
待子は、淑子の言い分には納得がいかない。
「じゃあ、どうするの?」
半ば膨れたように、口をとがらせて聞くと、
「電気製品は、向こうで買えばいい。
布団は直接、引っ越し先に運んでもらえばいい。
あと、細々としたものは、100均とかで買えばいいし…
そんなに荷物は、ないでしょ?」
キッパリと淑子は言い切った。
そう言われれば、そうだ…と思うけれども。
「あと、必要最低限のものだけは、宅配便で取りに来てもらうから」
さっさと淑子は、引っ越しにまつわるあれこれを、1人で決めてしまう。
もちろんダンボールも、スーパーでもらってきたものを差し出して…
「あんまり余計なものは、持って行かないのよ」
釘を刺すのを忘れなかった…
「オバサンらしいね!」
待子の嘆きの告白を聞くと、杏子はクスクス笑う。
「うちはその逆!
ママが、お皿から、鍋から、フライパンから…なんでも持たせようと
張り切るから…とんでもない荷物になりそうで、
結局引っ越しトラック、頼んだのよ」
母親の文句を言う…というよりは、杏子は何だかとても楽しそうだ。
それを聞くにつれ、待子は羨ましくて仕方ない…
「いいなぁ~杏子のママは、優しくて!」
はぁ~と待子はため息をもらす。
「私も、そんなママならよかったのになぁ」
羨ましそうに言う待子とはうらはらに、
「そうでもないよ!
うちのママは頼りないから…何にも決められないし…
オバサンみたいにシッカリしている方が、たのもしいから羨ましいよ」
慰めるように、杏子は言うけれど、それでもきっと…
自分の母親の方が、いいと思っているにちがいない…
そう思う待子なのだ。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
凪の始まり
Shigeru_Kimoto
ライト文芸
佐藤健太郎28歳。場末の風俗店の店長をしている。そんな俺の前に16年前の小学校6年生の時の担任だった満島先生が訪ねてやってきた。
俺はその前の5年生の暮れから学校に行っていなかった。不登校っていう括りだ。
先生は、今年で定年になる。
教師人生、唯一の心残りだという俺の不登校の1年を今の俺が登校することで、後悔が無くなるらしい。そして、もう一度、やり直そうと誘ってくれた。
当時の俺は、毎日、家に宿題を届けてくれていた先生の気持ちなど、考えてもいなかったのだと思う。
でも、あれから16年、俺は手を差し伸べてくれる人がいることが、どれほど、ありがたいかを知っている。
16年たった大人の俺は、そうしてやり直しの小学校6年生をすることになった。
こうして動き出した俺の人生は、新しい世界に飛び込んだことで、別の分かれ道を自ら作り出し、歩き出したのだと思う。
今にして思えば……
さあ、良かったら、俺の動き出した人生の話に付き合ってもらえないだろうか?
長編、1年間連載。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
海洋学者は海を見ながら終わりを望む
TEKKON
ライト文芸
「リノア。もうそっちへ行ってもいいかな」
海洋学者は今は亡き妻にそう呟いた
※ 当作品は蝶尾出版社『1000文字小説』に掲載された作品です。
王室公式のメロンクリームソーダ
佐藤たま
ライト文芸
昭和の終わり。
東京の大学に進学した佐藤トウコは、恋愛経験ゼロ。
そんな彼女に【トウコ、初カレ作るぞ計画!】彼氏が欲しいのなら、男の子ウケ狙ってキャラ変しようという話が持ち上がった。
サークルの合宿で知りあった松永 優と親しくなり、ふたりはつきあうことに…。
しかし、初めての彼氏、松永とつきあいだして1年の記念日に彼はいなかった。
数日前、ケンカ別れしたままトウコの前から姿を消したのだ。
ひとりの記念日から始まるストーリーです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる