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第4章 引っ越し前奏曲
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「そうよね?そう思うよね?」と…淑子と行く前から思い描いていた、
自分の理想の一人暮らしのことを…あらためて思い返している。
「そんな、ボロッボロのトコに住むより、私と一緒に住もうよぉ」
甘えるように、杏子が言う。
「そうしたいっ!そうしたいけど…」
そうなれば、どんなにいいだろう…と思うけれど
「でも、うちは母さんが怖いからなぁ」
逆らえない、自分がいるのだ。
さすがに矛盾している、とは思う。
そもそも母親の呪縛から離れたくて、一人暮らしをする決意をした、
というのに。
それでも杏子は
「そうだよねぇ」
あっさりと納得して、これ以上は蒸し返してこない…
「引っ越しはいつだっけ?」
杏子が聞くと、
「来月の頭」
さらりと待子は答える。
「あ、卒業式のあと?」
「うん」
「じゃあ、あっちでまた、会えるね」
待子の欲しい言葉をサラリと言う。
それだけが楽しみなんだ、と待子はちょっと気持ちが落ち着いた。
「荷物はね…引っ越しトラック、頼まないんだって」
もう一つの気になることを、打ち明ける。
「え~っ、どうやって運ぶのぉ?車?」
受話器の向こうから、杏子の驚いた声が響いて来る。
その声を聞くと…今どんな表情をしているのか、目に浮かぶようだ。
「荷物は、ダンボールに2~3個だけにして、あとは現地で
揃えるみたいよ」
思わず声が大きくなる。
前の晩…この件で、淑子とまた、バトルを繰り広げたのだ。
思い返すだけで、ため息が出て来る…
「で、オバサン、何と言ったの?」
心配そうに、杏子が聞いて来た。
自分の理想の一人暮らしのことを…あらためて思い返している。
「そんな、ボロッボロのトコに住むより、私と一緒に住もうよぉ」
甘えるように、杏子が言う。
「そうしたいっ!そうしたいけど…」
そうなれば、どんなにいいだろう…と思うけれど
「でも、うちは母さんが怖いからなぁ」
逆らえない、自分がいるのだ。
さすがに矛盾している、とは思う。
そもそも母親の呪縛から離れたくて、一人暮らしをする決意をした、
というのに。
それでも杏子は
「そうだよねぇ」
あっさりと納得して、これ以上は蒸し返してこない…
「引っ越しはいつだっけ?」
杏子が聞くと、
「来月の頭」
さらりと待子は答える。
「あ、卒業式のあと?」
「うん」
「じゃあ、あっちでまた、会えるね」
待子の欲しい言葉をサラリと言う。
それだけが楽しみなんだ、と待子はちょっと気持ちが落ち着いた。
「荷物はね…引っ越しトラック、頼まないんだって」
もう一つの気になることを、打ち明ける。
「え~っ、どうやって運ぶのぉ?車?」
受話器の向こうから、杏子の驚いた声が響いて来る。
その声を聞くと…今どんな表情をしているのか、目に浮かぶようだ。
「荷物は、ダンボールに2~3個だけにして、あとは現地で
揃えるみたいよ」
思わず声が大きくなる。
前の晩…この件で、淑子とまた、バトルを繰り広げたのだ。
思い返すだけで、ため息が出て来る…
「で、オバサン、何と言ったの?」
心配そうに、杏子が聞いて来た。
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