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第3章  魔女の館と、人の言う…

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  よく見ると、大家さんの言った通り、靴箱の端には、名前と部屋番号が
記入されたプレートが、貼り付けてある。
「さすが、女性専用だけあって、キチンとしてるわねぇ」
見当違いのところで、淑子は感心したようにうなづいている。
まるで待子に、少しでも気に入ってもらうようにと、いいところを
並べたてているようにしか、思えなかった。

「それじゃあ、行きましょうか?」
「お部屋はどこですか?」
いつの間に、関係が良好になったのか、ヒョウ柄の不動産屋と、母淑子が
待子のことを抜きにして、なごやかに話している。
「あっ、靴は、そこで脱いでくださいね」
呆然と立ち尽くす待子のことを、まったく目に入らないかのように、
大人たちはサッサと靴を揃え、足を踏み入れる。
 玄関を入ってすぐの真正面に階段がデンとあり、
「2階のお部屋です」
フジヨシさんは、先に立って、階段を上がって行った。
 使い込まれて、飴色にテラテラと光る階段は…
まるで何十年もそこに君臨しているかのような、圧倒的な存在感だ。
ギシギシと、歩くたびに音がする。

「何してるの?
 早くあなたも、上がりなさい」
容赦なく、ためらう待子のもとに、淑子の声が飛んできた。
階段を1段、足をかけた状態で…
淑子は振り向きざまに、大きく手を振ると…
待子は唖然としたまま、置いてきぼりの自分の心を置き去りにして、
グズグズと靴を脱いだ。
 するといつの間にか、大家さんが待子の側にしゃがみ込んで、
「住めば都、っていうでしょ?
 案外居心地いいかもしれないわよぉ~」とニコリと笑いかけた。


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