43 / 428
第3章 魔女の館と、人の言う…
10
しおりを挟む
よく見ると、大家さんの言った通り、靴箱の端には、名前と部屋番号が
記入されたプレートが、貼り付けてある。
「さすが、女性専用だけあって、キチンとしてるわねぇ」
見当違いのところで、淑子は感心したようにうなづいている。
まるで待子に、少しでも気に入ってもらうようにと、いいところを
並べたてているようにしか、思えなかった。
「それじゃあ、行きましょうか?」
「お部屋はどこですか?」
いつの間に、関係が良好になったのか、ヒョウ柄の不動産屋と、母淑子が
待子のことを抜きにして、なごやかに話している。
「あっ、靴は、そこで脱いでくださいね」
呆然と立ち尽くす待子のことを、まったく目に入らないかのように、
大人たちはサッサと靴を揃え、足を踏み入れる。
玄関を入ってすぐの真正面に階段がデンとあり、
「2階のお部屋です」
フジヨシさんは、先に立って、階段を上がって行った。
使い込まれて、飴色にテラテラと光る階段は…
まるで何十年もそこに君臨しているかのような、圧倒的な存在感だ。
ギシギシと、歩くたびに音がする。
「何してるの?
早くあなたも、上がりなさい」
容赦なく、ためらう待子のもとに、淑子の声が飛んできた。
階段を1段、足をかけた状態で…
淑子は振り向きざまに、大きく手を振ると…
待子は唖然としたまま、置いてきぼりの自分の心を置き去りにして、
グズグズと靴を脱いだ。
するといつの間にか、大家さんが待子の側にしゃがみ込んで、
「住めば都、っていうでしょ?
案外居心地いいかもしれないわよぉ~」とニコリと笑いかけた。
記入されたプレートが、貼り付けてある。
「さすが、女性専用だけあって、キチンとしてるわねぇ」
見当違いのところで、淑子は感心したようにうなづいている。
まるで待子に、少しでも気に入ってもらうようにと、いいところを
並べたてているようにしか、思えなかった。
「それじゃあ、行きましょうか?」
「お部屋はどこですか?」
いつの間に、関係が良好になったのか、ヒョウ柄の不動産屋と、母淑子が
待子のことを抜きにして、なごやかに話している。
「あっ、靴は、そこで脱いでくださいね」
呆然と立ち尽くす待子のことを、まったく目に入らないかのように、
大人たちはサッサと靴を揃え、足を踏み入れる。
玄関を入ってすぐの真正面に階段がデンとあり、
「2階のお部屋です」
フジヨシさんは、先に立って、階段を上がって行った。
使い込まれて、飴色にテラテラと光る階段は…
まるで何十年もそこに君臨しているかのような、圧倒的な存在感だ。
ギシギシと、歩くたびに音がする。
「何してるの?
早くあなたも、上がりなさい」
容赦なく、ためらう待子のもとに、淑子の声が飛んできた。
階段を1段、足をかけた状態で…
淑子は振り向きざまに、大きく手を振ると…
待子は唖然としたまま、置いてきぼりの自分の心を置き去りにして、
グズグズと靴を脱いだ。
するといつの間にか、大家さんが待子の側にしゃがみ込んで、
「住めば都、っていうでしょ?
案外居心地いいかもしれないわよぉ~」とニコリと笑いかけた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
聡明な彼女と透明なボクの交換日記
志波 連
ライト文芸
「出会い」というのは偶然なのか、必然なのか。
そんな哲学的なことはどうでもよくて、でも、「出会い」こそ地球上の人類が繁栄し続けるための唯一のキーワードであることは疑う余地がありません。
薄曇りの不安定な空模様のある日、何かに引かれるように二人の男女が出会います。
恥ずかしそうに語り掛ける女性。戸惑いながら答える男性。日常のそこかしこで見かける他愛もない光景。ほほえましいひと時です。
どこにでもあるそんな出来事ですが、たった一つだけ違うところが有りました。
そう、男性は「透明人間」だったのです。
透明人間の「ディアファン」と小学校教師の「はるか」はひょんなことから今時古風な交換日記を始めることになりました。普通の人間と透明人間が交際し始めるのに、何が適切か彼らなりに考えた方法だったのでしょう。
舞台は現在。透明人間という存在が公になってから約1年。もともと噂程度に「透明人間がいるらしい」という話は昔からありました。そんな半信半疑な中、とある事件がきっかけになって透明人間が明るみにでてしまい、出演したテレビでもトリックでないことが証明されました。
当時、最低支持率を更新し続けていた首相の人気取り政策で「透明人間保護法」というよくわからない法律が制定され、透明人間に基本的な人権と選挙権が与えられました。
当の透明人間たちは考え方もばらばらで、この機会にと「マイナンバーカード」を作る者もいれば、今まで通り密かに暮らし続ける者もいて、結局、数十人の登録者が「日本人」と認められました。
そんな世界の片隅で出会った二人でしたが、はたしてうまくいくのでしょうか。
まだ今は交際が始まったばかり。今後のことなんて二人は全然考えてなんかいません。
そんな二人の行く末を、我々は日記を盗み見しながら見守ろうではありませんか。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより使用しました。
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
天笠鈴音のちょい話
天笠鈴音
ライト文芸
私の周りでは、毎日楽しいことがいっぱい!
今まであった話や、思い出などなども
たくさん!
そんな私のお話です!
⚠気まぐれ投稿で、公開・非公開すぐ変えます(*ノω・*)テヘ
さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)
なかじまあゆこ
ホラー
森口さやがオーナーのさや荘へようこそ!さや荘に住むと恐怖のどん底に突き落とされるかもしれない!
森口さやは微笑みを浮かべた。 上下黒色のスカートスーツに身を包みそして、真っ白なエプロンをつけた。 それからトレードマークの赤リップをたっぷり唇に塗ることも忘れない。うふふ、美しい森口さやの完成だ。 さやカフェで美味しいコーヒーや紅茶にそれからパンケーキなどを準備してお待ちしていますよ。 さやカフェに来店したお客様はさや荘に住みたくなる。だがさや荘では恐怖が待っているかもしれないのだ。さや荘に入居する者達に恐怖の影が忍び寄る。 一章から繋がってる主人公が変わる連作ですが最後で結末が分かる内容になっています。
ゼフィルス、結婚は嫌よ
多谷昇太
ライト文芸
あるエッセーで「わたしは結婚しない。男に家庭に社会に(女とはかくあるべしと決めつける社会に)縛られ、決めつけられたくはない。わたしは100%、自分自身を生き抜く。生き抜いてみせる。これだけのことをこうしてエッセーで云ったからには、それだけの‘覚悟’がある。わ、た、し、は、結婚しない!」というちょっと眉に唾つけて見なければ信じられないほどの、すさまじい覚悟を述べた方がおられました。ご自分の写真付きでしたが、その写真を拝見してなおびっくり。髪の毛を長く伸ばした(お世辞ではなく)超美人だったからです。年令は28くらいだったかと記憶していますが定かではありません。1990年前後のことでした。これに感心のあまり書こうと思い立ったのがこの拙著「ぜフィルス、結婚は嫌よ」でした。ゼフィルスとは彼の巨匠手治虫先生の作品「ゼフィルス」から名をお借りしたのです。御作品では(男への)復讐の女神ゼフィルスということでしたが。とにかく、この端倪すべかざる女性をエッセーで知って思い立った作品です。先に一度(ラジオ)シナリオにしてNHKの公募に応募したのですが力たらずに入選しませんでした。今回20年近くを経てあらためて小説にしてみようと思い立ちました。主人公の名前は惑香、エッセーの主のようにできるだけ美しいイメージを出そうとして考えた名前です。作中にも記しましたが「みずからの美しさにと惑う」ほどの美貌の主ということです。その美しさは単に外形のみならず…? どうぞ作品内でご確認ください。手前味噌ですがラストは(たぶん)感動的だと思いますのでぜひどうぞ。
ハナサクカフェ
あまくに みか
ライト文芸
第2回ライト文芸大賞 家族愛賞いただきました。
カクヨムの方に若干修正したものを載せています
https://kakuyomu.jp/works/16818093077419700039
ハナサクカフェは、赤ちゃん&乳児専用のカフェ。
おばあちゃん店長の櫻子さん、微笑みのハナさん、ちょっと口の悪い田辺のおばちゃんが、お迎えします。
目次
ノイローゼの女
イクメンの男
SNSの女
シングルの女
逃げた女
閑話:死ぬまでに、やりたいこと
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる