桜ハウスへいらっしゃい！

第3章 魔女の館と、人の言う…

３

　　１人取り残された淑子は、
「なに？シェアハウスって」
途端に、不機嫌な声になる。
「なんというか…１つの家をみんなで共同で使うっていう、あれですね」
まるではしゃぐようにヒョウ柄の不動産屋が言うので、明らかに
何か隠しているのではないか…と、さらに疑るような目で、
淑子はルームミラーの向こうの、フジヨシさんの目をにらみつけた。
「それで、何が問題だって言うの？」
うさんくさいものを見るように、まだ疑いの目で、淑子が見るので…
フジヨシさんは、その視線からそらすように、まっすぐ前を向いたまま、
「実は、大家さんがご高齢のため、娘さんがかなり心配をされて、
　かなりの安価で、みなさんには提供しているんです」
と切り出した。

　そのこと自体は、別になんら悪いことではないので…
このヒョウ柄の不動産屋が、落ち着きないのが解せないのである。
それを払しょくさせるべく、やけに饒舌に、言葉を重ねるのも、
怪しいといえば、怪しい。

「つまり…親御さんに、何かあった時に、１人だと不安だ…ということで、
　出来るだけ、交流を持って欲しい、というのが、住んでいただく上での
　条件です。家賃を払うのも、銀行振り込みではなく、手渡しを
　していただきたい。
　お風呂も、母屋で入って欲しいそうなのです…
　要するに、家族のように過ごして欲しい、ということなんですね」

　フジヨシさんの提示した条件は、ちょっと風変わりではあったけれど、
待子は少し、大家さんがどんな人なのか…興味を惹かれた。

「だから、家賃も破格の値段だし、今の若い人には、受け入れられない
　かもしれませんが…初めての一人暮らしする方には、かえって安心　　
　なのではないか、と思うのです」
まるで大演説をぶちかますように、フジヨシさんは、熱く語った。