桜ハウスへいらっしゃい！

第3章 魔女の館と、人の言う…

１

　　まるで死刑判決が下されたような気分で…待子はグッタリと、
車のシートに、もたれかかった。
もう何が起こっても、驚いたりしないぞ…待子の心は
固く冷え切っていた。
　しょせん、母のゴーサインがなければ、たとえボロアパートにしろ、
決めることは許されないのだ…

　車は先ほどのアパートから、反対方向に向かい、ドンドン駅から
遠ざかって行く…
「ちょっと駅から離れてますけどね、バスもあるし、自転車があれば…
困ることは、ほぼありませんよ」
待子の様子を気にしながら、フジヨシさんは、声をかける。
この人…見た目ほど、ひどい人では、ないのかもしれない…
ふと待子はそう思う…」
グングンと山道の方へ向かい、商店街から離れたところで、
待子はそう考えていた。
「あっ、もうすぐ着きますよ」
運転席から声がかかった。
「あらぁ～ずいぶん静かなところね」
母淑子は、なんてことはない、という顔でつぶやいた。

　　
　　どうやら住宅街に、入って行くようだ。
道はドンドン細くなってきて…周りには、家がズラリと、立ち並んでいた。
ポツポツと、アパートも立ち始めているけれど…
大きな建物などはなく、思ったよりも、のどかな街並みだ…
「あらぁ、思ったよりも、格段にいいところじゃないの」
予定より少し早く来て…誇張でもなんでもなく…
のどかな風景が広がっているのだった。