桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第2章  こんなはずじゃなかったアパート探し

   18

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「あなたってば…いつまで座り込んでいるつもり?」
 スニーカーのヒモを結び直す待子に、またもイライラとした
淑子の声が投げつけられていた。
あわてて待子は立ち上がると、すでに2人は玄関の外で、何やら
楽し気に立ち話を始めていた。

 母淑子にせっつかれて、待子にとって理想のアパートを後にする…
待子の顔は、ドンヨリと曇っていた。
せっかくの大学デビューが、もうすっかり台無しにされたような気分に
陥っていた。
友人を家に招待したり、自分好みの部屋を作るぞ…と、心ひそかに
想い描いてきた夢が、一気に崩れ落ちたような錯覚に陥り、
泣き出したいような気分になっていた。
ムッツリと黙り込んでいると、淑子がご機嫌な顔で、チラリと見る…
「あら、どうしたの?疲れたの?
 昨日、早く寝なかったからよ!」
そう言うと…なぜか鼻歌を歌い出すしまつ。

ヒョウ柄の不動産屋の女は、その様子をチラリと見ると、ニコニコ笑う。
なにしろ今期のノルマ達成には…1人でも多くのお客さんとのミゾを、
埋めるには、これしかない…と、次なる攻撃の1手に出ることに。
そろばん勘定ではたき出した答えは…
やはり1人1人を大切に…確実に落とす、ということだった。
「でもまだ、人気の物件もあるんですよ?」
しおれた顔の待子をチラリと見ると、思わず後部座席の淑子に
こわごわと、声をかけた。
「あ、いいの、いいの!お安い物件だけで」
淑子はそう言うと…待子の顔色など、イチイチかまっていられない…
とばかりに、楽しそうに窓の外を見つめた。






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