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第2章  こんなはずじゃなかったアパート探し

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  ヒョウ柄の不動産屋は、待子のさえない表情には気付いて
いないようで…
スタスタと母淑子と並んで、洗面所へと移動する。
「ちゃんと洗面台が、独立しているんですね」
思わず、感嘆するように、待子が声をもらすと、
「そんなの…学生には、ゼイタクです!」
こらえきれなくなったのか、突然淑子の声が、響いて来た。
思わず、待子の体が、ピタッと硬直したようになる。
母淑子は、顔をゆがめて…仁王立ちになったまま、
何かブツブツとつぶやいている…

 ここがいいなぁ
 ここがいい!
 待子にとって、この部屋はまさに、今まで夢見て来た
部屋そのものだ…
待子は、すぐにでも声に出して言いたかったのだが…
先ほどからずっと、
「ゼイタクだわぁ~学生の分際で、こんな部屋、もったいなさ過ぎる!」
なおも1人で、ブツブツ言ってるのだ。
ところが、さすがに商売人だけあって、ヒョウ柄の不動産屋のフジヨシ
さんは…そんな淑子を華麗に無視して、
「やっぱりねぇ、女の子の一人暮らしですもんねぇ。
 キチンとしたところが、いいですよねぇ」
いいように勘違いしているのか、わざと無視しているのか…
戸惑う待子の方に近付いて来る。
いつの間にか、標的を母淑子から、待子にシフトチェンジしたようで…
淑子は、快く思っていなさそうなのは、間違いがない…
ニコニコと「ねぇ」と同意を求められても、困るのだ…
なぜなら待子はまだ、スネカジリ…
母淑子が、首を縦に振らない限り、どんなに気に入ってもダメなのだ。
残念だ…とても残念だ、と心の底からそう思う…
フジヨシさんの声はまだ、聞こえている…
待子はふと、窓の外を眺めた。

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