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第1章  そして決戦の火ぶたが落とされる

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「それにしてもさぁ」
 手に持つフォークを口にくわえると、杏子はじぃっと待子を見て、
「毎度毎度、付き合わされる、私の身にもなってよ」
案外冷静な口調で言う、杏子には…いつも頭が上がらない…
待子は急に、満面の笑みを浮かべて、
「さすがは、我が親友!
 あなた様がいなかったら、今日もきっと未遂で終わってたかも!」
神様、仏様、杏子様…
ふざけて待子は、杏子に向かって、手を合わせた。
すると杏子は、気をよくしたのか、比較的にこやかな笑顔を見せて、
「まぁいいけど…」
フォークを持ち替えると、
「待子といると、退屈しないし、お陰で私まで一人暮らし出来るしね」
そう言うと、ワハハハ…と笑った。
いつもはおしとやかで、クールなイメージで過ごしている杏子なのだが…

 もともとの今回のキッカケは…
杏子とのたわいもない発言が発端だった。
 それは大学受験が始まる時で、願書をとりよせようと、
2人で杏子の部屋で、おでこを突き合わせるようにして、
探している時だった。
待子は「あ~あ!」
進路指導から借りて来た本を、ベッドに放り投げると
「どうせ母さんは…地元の短大でも、やるつもりなんだわ!
 見ても、無駄よ!」
半分あきらめモードで言った。
すると静かに本を見ていた杏子が、
「私も、家を出たいのよねぇ」
同じようにうなづいた。
「あ~あ!東京へ行きたいなぁ。
 誰も知らないトコに行きたい」
両手をベッドに投げ出すと、杏子のベッドに寄りかかるようにして、
体をもたせかけた。
すると杏子は何やら思いついたようで、
「この際さぁ、別に東京じゃなくてもいいんじゃない?
 要は、家を出られるなら…」
と言うと、大学のリストを大きく開いて、
「ほら、これ!」と、待子の顔の前に差し出した。



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