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第1章  そして決戦の火ぶたが落とされる

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(あの人は、一筋縄ではいくタイプじゃないのだから、何があっても
 おかしくないなぁ)
胸の内で、待子はそう思うと、思わずため息がもれる。
チラリと見ると、さして二心なさそうに、杏子はフォークを
握り締めている。
「それにしても、杏子!ナイスアシストありがとう!」
拝むようなポーズで、待子が手を合わせると、杏子はフォークを
振り回し、
「そうねぇ、チーズケーキに免じて、許してあげようかなぁ」
軽く片目をつむると、ニッコリ笑った。


 もともと待子には、家出願望があった。
始まりは…物心のついた4歳の時だ。
弟が初めて熱を出して、家中がオタオタしていた時に、
あまりにも放ったらかしにされて、幼い待子はプチンと切れて、
大切なスヌーピーのぬいぐるみと、ブタの貯金箱を握りしめて、
家を出たのが始まりだ。
あの時は…と待子は今でも忘れない。
公園の中で、ブランコに揺られていたところを、近所のおばさんに
捕獲され…家に連れ返されたのだ。
こっぴどく叱る母に、
今度こそ、うまくやってやる…と固く決意をしたのが始まりだ。
それからは、何回となく家出を敢行するも、すべて確保され…
(この時は、おばあちゃん家を目指した)
駅に向かって、キップを買おうとしたところで、
不審に思った駅員さんに、保護される…
ここで悟ったのだ。
家出は割には合わない、と。
今度はしっかりと計画をして、不意を衝いて、(奇襲攻撃だ)
正々堂々と大手を振って、家を出てやろう…と決意を固めたのだ。
あの日の屈辱…
「あんた、毎回毎回、同じ手を使っても、通用しないのよ。
 無駄なことに、時間を割くのはやめなさい」
母親の小言が、深く刻まれて、待子の心に深く刻まれたのだ。
刹那的に実行すると、うまくいかない…という苦い教訓だ。

あれから少しは自分も、知恵がついたと思う…
そうして頼もしい自分の助っ人の、杏子の顔を見つめた。
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