ラストダンスはあなたと…

番外編

１

　　たった1人、自分はこの小さな城で生きて来た…
寂しいと思ったことはないはずなのに、
小さな嵐がやがて大きく変わる時、彼の心を大きくかき乱していった。

「オーナー、どういたしましょう？」
　先ほども、自分の片腕ともいうべき従業員が、声をかけてきた。
「様子を見てくれ」
そう言うと、彼は眉間を指で揉む。
　わずらわしいことばかりだ。
男はすべてに、絶望していた。
自分には、もう陽の光が射すことは、ないだろう…
そう思っていた。
だが…心の中の嵐は、まだ吹き荒れている。

　ある日突然、パッと花を開くように、その訪問者が現れた。
初めは単に…自分のこの静かな時間を、奪う存在なのだろう…と認識していた。
だが…再びまた、この新しい光を手放そうとしている今…
今まで感じたことのないような、寂しさを感じるのはなぜだろう？
男は静かに目を閉じる。
すると幼かった頃の思い出が、よみがえってくる。
恋を知らなかった、幼い日々のこと…
そうしてそれに伴って、苦い思いもまた湧きおこるのだった…


　　　　　　破られた約束

　　みんな自分から離れていってしまう…
男は悲痛な思いで、何も映ってはいない、モニター画面をじぃっと凝視する。


　あれはいつのことだったか、母と共に手入れしていたバラの庭で…
小さな天使が、舞い降りたのだ。
彼女はこの庭の管理人の娘で、一緒に四葉のクローバーを探して遊んだのだ。
「これからも一緒にいようね」
とバラのアーチの下で、交わした約束…
彼女は１つ年下のサヨちゃん、という女の子だった。
いつも公園で一緒に遊び、友達のいない彼にとっては、
たった1人の仲良しだった。
「ボクのお嫁さんに、なってくれる？」
勇気を振り絞って言う武雄に、サヨちゃんは恥ずかしそうに
「うん」とうなづいた。
そうしてその約束は、守られると信じていた。

　だがそんな幸せは、長くは続かなかったのだ…