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第 16章  最初で最後の思い出を…

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  ちっとも話しかけてはくれない、パートナーのことを、珠紀は
残念に思っていた。
「どうしたんだ?どこか痛むのか?」
 急に黙り込む珠紀に気付き、彼はコソッと話しかける。
「えっ」
こういう時だけ、気付くとは…
この人は、鈍いのか、鋭いのかわからないなぁと、珠紀は一瞬
ドキッとする。
「いえ、別に…なんともないです」
 あわててそう言うけれども…
どうしてだか、まともに彼の顔が見れなかった。
「本当か?顔が赤いけど…」
熱でもあるのではないか、と彼は額に手を当てる。
たちまち耳まで赤くなると、珠紀はその手からすぃっと逃れた。
「だ、大丈夫です。ちょっと…疲れただけだから」
あわてて壁際の椅子の方へと、歩み寄った。

 スルリと珠紀の手が、すり抜けるので、彼は唖然としてその場に立ち尽くす。
困ったように立っているので
「あらあら」
山内さんがクスクス笑い、
「坊ちゃん!なら私が代わりに…踊りますか?」
からかうように、声をかける。
同情された…
さすがに武雄は気付いたのか、
「それはちょっと…」
モゴモゴとつぶやくのを、横目で見ると
「冗談ですよ、冗談!」
そう言いつつも、バンと音が出るくらい、彼の背中を
思いっきり平手でたたいた。
 仲がいいなぁ~
何となく羨ましそうに見ていると…
「どう?疲れた?」
武雄が珠紀の側に、近付いて来る。
「外の風でも、あたろうか?」
スッとさり気なく、手を差し出す。
ためらいつつも、珠紀はその手に触れた。
 
 この数日で、何かが変わってきたような気がする。
珠紀はひそかに、そう感じていた。
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