247 / 286
第15章 ラストダンスはあなたと…
21
しおりを挟む
「なに?なんですか?」
彼の様子が、急におかしくなったのを、珠紀はすぐに気付いた。
「いや…なんでもない」
そう言うけれど、彼は明らかに、動揺しているようだった。
だが珠紀は、あえて何も聞こうとはしない。
このままでもいいか…と思ったからだ。
さっき上って来た階段を、今度は降りて行く。
普段なら、面倒に思うはずなのに…珠紀の心は夢うつつ。
久し振りに、胸がときめいていて…何だかフワフワとおぼつかない。
武雄のことを、これまでで1番、身近に感じたからだ。
「キミも…明日、引き払う準備を…」と言いかけるけれど、
真剣な表情をしている彼の顔を見上げる。
(たとえ仮面で顔が半分、隠れていても…)
それでも彼に対する気持ちは、変わらない…
そんな風に、思っていたのだ。
(ばからしい…)
それと同時に、彼は自分の心の変化に、ひどく動揺していた。
ほんの数日、一緒にいただけの女の子に、心を惹かれるなんて!
しかもすっかり忘れていた、あの幼い頃の初恋の相手と、ダブルなんて…
(あり得ない)
正直そう思う。
(とにかく、1日でも早く、帰ってもらうしかない)
彼もまた、自分の心にフタをする。
これは一時的な、気の迷いだ。
ただ情が湧いただけなのだ…
そう自分にも、言い聞かせてきた。
(女などに、うつつを抜かす時間など、存在しない。)
彼は自分を律するように、あえて自分に厳しくしていた。
彼はある決意をしていた。
それは…1日でも早く、彼女を普通の暮らしに戻し、
そうしてあることを実行しよう…と決意していた。
彼の様子が、急におかしくなったのを、珠紀はすぐに気付いた。
「いや…なんでもない」
そう言うけれど、彼は明らかに、動揺しているようだった。
だが珠紀は、あえて何も聞こうとはしない。
このままでもいいか…と思ったからだ。
さっき上って来た階段を、今度は降りて行く。
普段なら、面倒に思うはずなのに…珠紀の心は夢うつつ。
久し振りに、胸がときめいていて…何だかフワフワとおぼつかない。
武雄のことを、これまでで1番、身近に感じたからだ。
「キミも…明日、引き払う準備を…」と言いかけるけれど、
真剣な表情をしている彼の顔を見上げる。
(たとえ仮面で顔が半分、隠れていても…)
それでも彼に対する気持ちは、変わらない…
そんな風に、思っていたのだ。
(ばからしい…)
それと同時に、彼は自分の心の変化に、ひどく動揺していた。
ほんの数日、一緒にいただけの女の子に、心を惹かれるなんて!
しかもすっかり忘れていた、あの幼い頃の初恋の相手と、ダブルなんて…
(あり得ない)
正直そう思う。
(とにかく、1日でも早く、帰ってもらうしかない)
彼もまた、自分の心にフタをする。
これは一時的な、気の迷いだ。
ただ情が湧いただけなのだ…
そう自分にも、言い聞かせてきた。
(女などに、うつつを抜かす時間など、存在しない。)
彼は自分を律するように、あえて自分に厳しくしていた。
彼はある決意をしていた。
それは…1日でも早く、彼女を普通の暮らしに戻し、
そうしてあることを実行しよう…と決意していた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ハーバリウムの棺桶
雨上鴉
ライト文芸
「あら、あなたも永遠が欲しいのね!」
仮想19世紀後期のとある街に、特別な場所がある。
死体を綺麗にする技術士──エンバーマーの店主が営む花屋。
そこには、他の葬儀屋にはない特殊なメニューがあって……?
※この小説には実在の技術が出てきますが、全てフィクションです。実際のものと関係はありません。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
夢を紡ぐタイプライトな羊達
橘 嬌
現代文学
小説家を目指す、夏樹紗希(なつきさき)は、密かに恋焦れていた親友作家の小説をずっと読み続ける。……彼は風見詩経(かざみしきょう)というペンネームでネットの投稿小説で人気の上位を長年取り続けていた。ネットに投稿される圭介(風見詩経)の作品に耽溺する紗希。……ある日彼女が手に取った彼の小説はある時期からペンネームの被る別の作家の人物の作品とすり変わっていた。そしてペンネームを被らせる不穏な一人の小説家の存在とある事件に巻き込まれる事になるのだが……
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ヒーラーズデポジット
池田 蒼
ライト文芸
ギャンブルに明け暮れて生きてきてどん詰まりになった中年男性が藁にもすがる思いで訪れた、路地裏の不思議な店。そこで受けた審査をきっかけに出会った少女と不思議な力が男の運命を数奇なものに変えていく。複雑に絡み合う男の過去や裏組織の陰謀に予想されない結末が待ち構えているかもしれません。(ただいま絶賛リバイズ中です。そのうえで5月中に書き終えれるように頑張ります。)
ご飯を食べて異世界に行こう
compo
ライト文芸
会社が潰れた…
僅かばかりの退職金を貰ったけど、独身寮を追い出される事になった僕は、貯金と失業手当を片手に新たな旅に出る事にしよう。
僕には生まれつき、物理的にあり得ない異能を身につけている。
異能を持って、旅する先は…。
「異世界」じゃないよ。
日本だよ。日本には変わりないよ。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる