ラストダンスはあなたと…

第1４章 混線

１

「ねぇ、こんなことしていてもいいの？」
　戸惑い気味に、玲は秀人にささやく。
「いいんだ、これは…人助けなんだから！」
　人目を避け、コソコソと2人は物陰に身をひそめる。
「じゃあ今度は、こっちの方を、探してみるよ！」
と玲をうながした。

　一旦は引き下がったこの2人…
元々のホテルの予約の日、ギリギリまで粘って、珠紀の行方を
探っていたのだ。
現時点で、彼女が消えた中庭を、重点的に回る。
　池の周りや、ホテルの周辺、怪しいと思われるところは、
くまなく探した。
最初の方こそ、他のメンバーも快く首を縦に振った。

「これ以上は、ムリ」
「バイトもあるし…お金も…」
櫛の歯が1本ずつ欠けたように、次々と帰って行ってしまった。
「なんて、冷たいやつらなんだ！」
秀人は憤慨したけれど…
だけども彼らの言い分も、もっともなのだ。
　いくら田舎のリゾートホテルとはいえ、宿泊費もただではない。
このまま泊まり続けると…それなりに宿泊費もかさむのだ。
「なんだよぉ。歓迎会という名の合宿をするんじゃあなかったのか？」
秀人は気色ばむ。
　初めはこの奇妙なホテルの探索も、楽しんでいた男性陣だったが…
「お前、いい加減にしろよ！
　もしかしたら…先に帰っているのかもしれないだろ？」
ついになりふり構わぬ秀人のことを、愛想をつかしたのだ。
「何言ってるんだ！
　人が1人、消えたんだぞ」

それでもチラリと、頭の隅に、嫌な予感を感じている。
まさか…最悪の事態には、なってはいないとは思うけれど…と。
見た目はチャライ、今どきの男子学生風の外見なのに、
思いのほか、正義感の強い秀人の姿に、仲間たちはちょっと
呆れてしまうのだった。