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第12章  優しくしてよ、モンスター

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「そうなの?」
 先ほどの男の取り付く島もない対応に、怒ってはいたけれど、
どうにか思い直す。
「もう、ホント、坊ちゃんってば!」
 やれやれと、山内さんは呆れたように、声を上げるとニヤリと笑う。
「ほら、よく…好きな子には、いじわるをする、って言うでしょう?」
何か思い当たる様子だ。
それって、小学生の男の子のことなんじゃ…と思っていると、オバサンが
片目を軽くウィンクして、
「坊ちゃんの心の成長は、小学生辺りで、止まっているのよ」
楽しそうに笑う。
「え~っ!」
そうなの?
珠紀は疑わしそうに、オバサンを見返す。
そんなこと言ってて、本当に怒り出したら、どうするの?
そうひそかに考えていた。
「ま、その時はその時よ!」
カラリとした声で、子供のようにクシャリと笑う。
「まかせて!私から…坊ちゃんに、伝えとく!」
オバサンは、ポンと自分の胸をたたいた。

 
 それから、どんな手を使ったのかはわからないけれど…
男は珠紀の所にやって来て、
「すまなかった」と彼は頭を下げた。
「君の気持ちも考えず、つい暴走してしまった。すまない」
あまりに素直に頭を下げるのに、珠紀はあわてて頭を振った。
「いいえ、私の方こそ!
 失礼なことをして、ごめんなさい」
珠紀も深々と頭を下げる。
「それにしても…素敵なところですねぇ」
すらりと自然に言葉が出て来たので、男は驚いた顔になる。
「そうか?」
仮面のせいで、顏は見れないけれど…
ちょっと照れているようにも見えた。
「はい」
花壇の側のベンチから立ち上がると、ゆっくりとポーチの方まで
歩いて行った。
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