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第9章   迷路に迷い込んで…

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  玲の脳裏には、あの冷ややかな闇のような暗い瞳がよみがえってきた。
珠紀は大丈夫だろうか…と、再び気になって来る。
不安な気持ちを抱いたまま、じぃっと秀人の背中を目で追っている。
ひと足先に、その建物に近付くのが見えた。

「おーい、早くおいでよぉ」
 大きな声を出して、秀人は手を振る。
(無防備過ぎるわ)
もしも、あの男に見られたら、どうするの、と玲は顔をしかめる。
だが秀人は何だか楽しそうに、ガラスの建物に近付く。
まるでピクニック気分だな、と苦笑する。

 もしかしたら、あの男がいるかもしれないというのに…と、
玲はヒヤヒヤしながら、秀人の後ろ姿を追いかける。
漆黒の闇の中に、ポッカリと白亜の城のように、そこだけが
光り輝いている。
 全面がガラスで覆われていて、月あかりを浴びて、キラキラと光を
放っている。
魅せられたように、玲はゆっくりと近寄って行く。
もしも何かが飛びだして来たら…すぐに逃げられるように…と、
先輩の動きを逐一チェックしながら、距離を取ったまま、
その後を追う。
 ランプが優しく2人を照らし出す。
植え込みのガーデンライトが、足元を照らしている。
 もちろん入り口があいてるかどうかも、わからない…
傍らには、バラの植え込みがあり、誘うようにして、甘い香りを
漂わせていた。
 目の前のガラスの建物は…すべてがガラスで出来ているのか、
それともアクリルなのかは、よくわからないけれど…
中が透けて見えていた。
(やはり、ここじゃあないかぁ~)
近付いて、中をひょいとのぞき込んだとたん、玲は少し
ガッカリとした。
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