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ソータローのこと…120

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「ねぇ、ソータロー。
 ホントに、何にも覚えていないの?」
 どうしても、信じられない…と、清子はさらに食い下がる。
「えっ?」
困った顔で、宗太郎は先生に助けを求める。
だが先生は、淡々とした口調で、
「思い出してごらん!
 キミが…閉じ込められた、あの部屋だよ」
重ねて尋ねる。


「閉じ込められた?」
 フッと、宗太郎は口をつぐむ。
頭の隅で、確かに何かがあったような…ボンヤリとした感覚がある。
それが何なのか、宗太郎にはまだハッキリとはしない。
「なるほど。まだ、そうなのか」
だが、先生には思い当たるのか、何事か納得したように、うなづいている。
それから、じぃっと宗太郎の目を見ると、
「それならそこに、誰かいた?」
なぜか先生は、そう切り出す。
「えっ?何を言っているの?
 覚えているわけが、ないじゃないのぉ」
清子は、宗太郎と先生を見比べて、かばうように言う。
 だが宗太郎は、軽く目を閉じると…
「うん、誰か…いる…」
まるで夢の続きを見るように、そうつぶやいた。
 
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