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ソータローのこと…76

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「あの時の?」
 この人は、一体何が言いたいのだろう?
宗太郎は思わず、清子と神林君の方を振り向く。
「そうだよ」
宗太郎が黙っている間に、神林君が代わりに答える。
「やはり、そうかぁ」
ふぅ~
老人は、大きくため息をつく。
先ほどまで、ピクリともしなかった老人が、見違えるほどハッキリとした
顔つきで、宗太郎たちのことを見ている。
「キミたちには、本当に迷惑をかけたなぁ」
時折タンがからんで、声を途切らせている。

「じいちゃん、身体にさわるよ。
 もうしゃべらなくてもいい」
 老人のことを、憎んでいると言っていた神林君が、本当に老人のことを
心配しているようだ。
「いや、そういうわけにはいかない」
だがなぜか、老人はかたくなに、それを拒む。
(一体、どうしたのだろう?)
宗太郎は不思議に思うけれど、清子はなぜか、老人が何を言いだすのか…と、
待ちかまえているようだ。
(清子、どうした?)
 さらに、ひと言も聞き漏らすまい…と身がまえている。
神林君も、何か言いたそうではあったけれど、あえてそれ以上は、触れよう
とはしない。
「まずは、私は、犯人ではない」
いきなり老人が、思いがけず強い視線を、宗太郎に向けた。
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