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ソータローのこと…60

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「ボクはただ…本当の犯人を知りたいだけなんだ」
 突然、思いもよらないことを、神林君が言う。
「本当の犯人?」
「真犯人のこと?」
「犯人って、何の犯人?」
「えっ?あの人…犯人じゃあないの?」
噛み合わない会話が、宗太郎の目の前で繰り広げられる。
(まただ!また、訳の分からないことを、話している)
宗太郎は、何だか自分がつまはじきにされているようで、顔をしかめる。

「さぁ~それは、どうかな?」
 なぜか神林君は、再び余裕を取り戻し、薄笑いを浮かべて、
宗太郎と清子の方を見返す。
(一体、何が言いたいんだ?)
宗太郎は話の輪に入れず、困った顔になる。
まさか神林君が、そんなことを考えているだなんて…
(だけど、真犯人って、なんだ?)
宗太郎は、ボンヤリとする。

「そっかぁ」
 ただ清子は、少しも態度を変えることなく、グルリと神林君の
周りを歩く。
「じゃあ、おじいさん…何か気が付いているのかしらねぇ?」
思いをめぐらすように、ポツンと言う。
「さぁ、どうだろうな」
再び神林君が、黙り込む。
まるで、誰のことも受け付けないような、透明な壁のようなものを
張り巡らせているように、宗太郎には感じられた。
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