となりのソータロー

第16章

２

「何をしているのよ」
　清子がもう一度聞くと、
「いや、この人形…何かを見ているような気がして」
宗太郎は、人形と目線を合わせる。
「そうなの？」
確かに、この人形…何かを見ている気がする。
何があるの、と思い…清子もためしに、同じようにしてみる。
すると…
「あれ？」
　半分信じていなかったけれど、宗太郎と同じように見ているうちに…
あることに気が付く。
「なんだか、あの人形…」
思わずつぶやく。
「あっ、やっぱり、そう思う？」
みなまで答えないうちに、宗太郎は清子に聞く。
「あの人形だけ…こっちを見てる」
ボソッとつぶやく。
「そう、でも…この人形に似ているでしょ？」
　そう思わないか？
宗太郎は腰に手をあてて、じっくりとその人形を見詰めると…
おもむろに、ツカツカと近づいて行く。

「えっ、何をするの？」
　清子の声に、ようやく神林君も気が付く。
「どうした？」
先生もけげんそうに、こちらを見ている。
「いや、あの、人形が…」
清子がそうつぶやいている時に、宗太郎が例の人形に手をかけると、
無造作にどけていく。
「おい、何をしているんだ？」
オジサンも、笑いを含んだ声で、そう聞く。
「アイツ…頭がおかしくなったんじゃあないの？
　高梨が、頭を突っついたせいで！」
ゲラゲラ笑いながら、そう言う。
だが…
「あっ！」
清子が叫んだ瞬間…異変が起きた。
「あれは、なんだ？」
宗太郎が触った部分に、ポッカリとすき間が現れた。