となりのソータロー

第15章

４８

「はっ？」
　神林君もオジサンも…自分たち身内をさしおいて、なぜ宗太郎が
知っているのだ、とその耳を疑う。
「だって、ボク…その子に会ったことがあるんだもん」
宗太郎は子供のような口ぶりで、彼らを煙に巻く。
「会った？なんで？」
　どういうことなんだ？
神林君まで、宗太郎に詰め寄る。
「だって」
ベッドの方に近寄ると、
「ボクも…あの場所に連れていかれたからだ」
意味深なことを、口にした。

「赤い線と青い線…どっちが好き？」
　あの不思議な部屋に連れていかれたのは、宗太郎だけではなかった。
宗太郎の他に、もう一人、女の子がいた。
その子は「わかんない！」とわめいたけれど…
宗太郎は迷わず「青！」と怒鳴った。
あそこにいたのは、若いお兄さんと、リョウくん。
リョウくんは…オジサンに、何かを言われていた。
（何だっけ？）
　宗太郎は、さらに思い出そう…と、眉をギュッと寄せる。
「じいさんが…大切なものは、何だ？」
確かオジサンが言っていたのは、このことだった…と思う。
　オジサンは、その場にいた子供たちを問い詰めたけれど、
みんなは何も知らなかった。
ただ、知っていたのは…宗太郎と、あの女の子だけだった。

（姉さんは、あの時、いたっけ？）
　宗太郎は何度も、思い出そうとするけれど、よくわからない。
しかも清子とは…
（確か、はぐれてしまった）
あの時、どうしただろう…
宗太郎は、さらに記憶を掘り起こそうとしていたのだ。