となりのソータロー

第13章

１

　ガランとしたその部屋には…人のいた気配は、どこにもない。
空気も、どんよりと淀んでいる。
時もそのまま、止まっているような…そんな感じがしていた。
何もない部屋の一つだけある窓際に、小さな机と椅子が一つ、置いてある。
　ためらうことなく神林君は、その椅子に腰かけて、目をつむっている。
オジサンは、段差のある床の上に、ストンと腰を下ろしている。
清子は入り口の近くで、宗太郎の陰に隠れるようにして、立ちすくんでいる。
清子が青ざめた顔をしているのに、気が付く。
「休憩しよう」
宗太郎は、清子の肩に手を置く。
「あっ、そうだな」
神林君は、あわてて立ち上がると、清子に指し示す。
「ありがとう」
珍しく素直に、清子はその椅子に身体を預けた。

「さて、どこまで話したかな」
　オジサンは、この雰囲気を楽しむように、満面の笑みを浮かべ、
宗太郎たちを眺めている。
（こんなことを、聞きたいわけじゃない）
　まるで、オジサンの独壇場だな、と宗太郎は苦々しく思う。
「じいちゃんのことを、利用したんだって」
今にも噛みつきそうな勢いで、神林君が聞く。
（この二人…本当に親戚なのか？）
こんな茶番は、もういらない…
宗太郎は、吐き気を覚えた。

「そうだったな」
　まるで水を得た魚のように…オジサンはにこやかにうなづくと、
「じいさんは、子供たちを使って…何かの研究をしていたらしい」
真顔で、そう言うと
「信じられるか？」
挑むような目で、宗太郎を見つめた。